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PubMedID 17178909 Journal J Cell Biol, 2006 Dec 18;175(6);925-35,
Title Recruitment of Atg9 to the preautophagosomal structure by Atg11 is essential for selective autophagy in budding yeast.
Author He C, Song H, ..., Legakis JE, Klionsky DJ
基礎生物学研究所・分子細胞生物学研究部門  大隅良典研    鈴木邦律     2007/02/21

Atg9とAtg11の相互作用とCvt pathwayとの関係
Selective autophagyとタイトルにあるように、S. cerevisiaeにおけるCvt pathwayに関する論文。
Atg9はAtgタンパク質の中で唯一の複数膜貫通ドメインをもつタンパク質として知られており、オートファゴソームの膜の由来を知る上で重要なタンパク質であると考えられている。
Atg9と相互作用するタンパク質をyeast two hybrid法により探索したところ、Cvt pathwayに必須なAtg11が得られた。
プロテアーゼ消化実験により、Atg9のN末とC末は細胞質側に露出していることが示され、Atg9のN末159-255残基の領域とAtg11の4つあるcoiled-coil領域のうち2番目(CC2)とが相互作用していることが明らかとなった。
Atg11のCC2を欠いた株ではAtg9はpre-autophagosomal structure (PAS)と呼ばれる領域に正常に局在できなくなる。
Atg11のCC2はいくつかのAtgタンパク質と相互作用していることが分かっているため、CC2を欠損させた実験では、他のAtgタンパク質との相互作用が失われた結果を見ている可能性がある。
そのため、random mutagenesisによりpoint mutantを得た。
得られたAtg9-H192L mutantはAtg11との結合が失われており、Cvt pathwayに欠損が見られた。また、Atg9がPASに局在できなくなることも分かった。
すなわち、Atg9がN末を介してAtg11と結合することが、自身のPAS局在、結果としてCvt pathwayを正常に動かすのに必須であるという結論が得られた。

転じて栄養飢餓で誘導されるオートファジーはAtg9-H192Lでも正常であった。オートファジーを誘導した細胞ではAtg9-H192Lが正常にPASに局在することからもこの結果は妥当なものだと考えられる。

Cvt pathwayには正常なアクチン細胞骨格が必要であることが分かっている。アクチンのmutantであるact1-159でAtg9とAtg11の局在を見ると、PAS局在が失われ、一部がドット状の構造をなしてミトコンドリアに局在していることが分かった。
Atg9のPAS局在はAtg11に依存していることから、アクチン細胞骨格がAtg11を介してAtg9をミトコンドリアからPASに局在化させる役割を果たしていると推測される。

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データはきれいで、よく整合性が取れている印象です。
Atg9とAtg11の相互作用がCvt pathwayに必須であることが明確に示されています。

問題があるとすると、Figure 9で示されているAtg9 cycling modelの記述でしょう。これまでにAtg9がcyclingしていることを明確に示した実験結果がなく、cycling自身の意義が全く不明であるということは認識しておくべきでしょう。このモデルを完全否定すべきではないと思いますが、信用に値するものかどうかは十分に検討すべきです。

   
   本文引用



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