PubMedID |
20010695 |
Journal |
EMBO J, 2010 Feb 3;29(3);606-18, |
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Title |
Antagonism of Beclin 1-dependent autophagy by BCL-2 at the endoplasmic reticulum requires NAF-1. |
Author |
Chang NC, Nguyen M, Germain M, Shore GC |
東京医科歯科大学、細胞生理学分野 水島昇研 板倉 英祐 2010/02/10
オートファジー抑制因子NAF-1
哺乳類オートファジーに関わる因子としてNAF1が報告されました。著者らはBcl2を中心に解析しているラボであり、今回オートファジーに参入してきた模様です。
とっかかりはBCL-2結合タンパク質としてNAF1を同定したことから始まる。(ER局在BCL-2b5を使用した)
これはWolfram syndrome2(WFS2/Cisd2)神経変性疾患の原因遺伝子として知られているが、著者らはNutrient-deprivation autophagy factor-1 NAF1と命名してしまった。
次に内在性の抗体染色からNAF1はER局在であることが観察された。(以前ミトコンにあるとも報告されている)
BIKの強制発現や飢餓で誘導されるLC3IIがNAF1のノックダウンでより多くなり、またGFP-LC3ドットが増加することも観察している。さらに電顕でも確認。
BCL-2とBeclin1が結合することは知られているが、NAF1ノックダウンによりBeclin 1とBcl2結合の減少を引き起こした。
さらにNAF1はBcl2と共にIP3receptorに結合することができ、 BCL-2 b5によるER内カルシウムの放出をNAF1 ノックダウンで抑制できることからNAF1はBCL-2の機能を制御している。
まとめるとNAF1はER膜タンパク質であり、 BCL-2と結合し、 BCL-2のオートファジー抑制機能に必要である。
LC3IIのウエスタンブロットデータなどは微妙な差で議論しているためいまいち信用性に欠けると思いました。
しかし、実は昨年Cisd2(本論文ではNAF1と命名)のノックアウトマウスがすでに報告されており、そのマウス組織でもオートファジーが促進(LC3IIの増加、電顕によるオートファゴソームの観察)していることがすでにわかっている(そのマウスは早老症の表現型を示すが、長期にわたり生存可能である)(Gene Dev. 23, 1183, 2009)。独立した2論文で同じ表現型を示していることから、NAF1は実際にオートファジーの抑制因子として機能している可能性は高いのかもしれません。またIP3receptorやカルシウムがオートファジーの誘導に関与しているという報告もあることから、カルシウムとNAF1との関係も含めて今後の展開が気になるところです。