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PubMedID 20123978 Journal Mol Cell Biol, 2010 Apr;30(7);1757-68,
Title DYRK1A and Glycogen Synthase Kinase 3{beta}, a Dual-Kinase Mechanism Directing Proteasomal Degradation of CRY2 for Circadian Timekeeping.
Author Kurabayashi N, Hirota T, ..., Sanada K, Fukada Y
東京大学 大学院理学系研究科 生物化学専攻  深田研究室    倉林 伸博     2010/03/12

時計タンパク質CRY2のリン酸化メカニズムとその概日リズム制御における役割
 私が中心となって行ってきた研究が、最近アクセプトされましたので、紹介させていただきます。


 約1日の生物リズムを生み出す概日時計は、生物に普遍的かつ重要な生理機能であり、その周期の乱れは規則正しい睡眠-覚醒や食事のリズムに影響を及ぼします。概日時計の分子発振は、時計遺伝子の転写活性化が適切な時刻にオンとオフの制御を受けることによって24時間の周期を正確に維持しています。この分子発振において、時計タンパク質CRY2は時計遺伝子の転写活性化を強力に抑制します。そのため、CRY2が適切な時刻に発現して時計遺伝子の転写を抑制し、一方、適切な時刻に分解して転写の抑制が解除される、という2つのプロセスは、概日時計の周期決定に極めて重要であると考えられます。

 私たちは、DYRK1Aという新規のタンパク質キナーゼがCRY2の557番目のSer残基(Ser557)をリン酸化することを見出しました。DYRK1Aによりリン酸化されたCRY2は、さらにGSK-3βによってその近傍の Ser553がリン酸化され、2段階にリン酸化されたCRY2はプロテアソーム分解へと導かれます。重要なことに、マウス肝臓におけるDYRK1AのCRY2 Ser557リン酸化活性は、CRY2が蓄積する時間帯をピークとする日周変動を示します。さらに、Dyrk1aを培養細胞においてノックダウンすると、約0.5時間の時計周期の短縮が認められました。Dyrk1aノックダウン細胞におけるCRY2タンパク質量の日周変動を核と細胞質にわけて調べたところ、細胞質においてはCRY2タンパク質量の増加が認められました。一方、核内のCRY2レベルは殆ど変化しないものの、CRY2の早い蓄積が観察されました。以上の結果から、DYRK1AはCRY2が蓄積する時間帯において細胞質CRY2の分解を促進し、CRY2の核移行タイミングを遅延させる重要な因子である可能性が示唆されました。つまりCRY2のSer557リン酸化によるプロテアソーム分解制御は、時計遺伝子の転写抑制時刻の遅延メカニズムとして時計の周期を調節すると考えられます。

 概日時計の分野において、詳しく研究されてきたPERタンパク質のプロテアソーム分解機構ですら、それが細胞内のどこで、一日のうちいつ起こっているのかは不明でした。私たちの今回の研究は、プロテアソーム依存的なタンパク質分解が時空間制御されている例を示した、意義深いものであると考えています。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局