PubMedID |
20159448 |
Journal |
Neuron, 2010 Feb 11;65(3);341-57, |
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Title |
E3 ligase Nedd4 promotes axon branching by downregulating PTEN. |
Author |
Drinjakovic J, Jung H, ..., Dwivedy A, Holt CE |
筑波大学 生命環境科学研究科 千葉研究室 鶴田文憲 2010/03/13
Nedd4はPTENの分解を介して神経細胞の軸索分岐を制御する
先月のNeuron誌に、ユビキチンリガーゼNedd4が神経細胞の形態制御に重要であるという論文がback to backで報告されましたので、今回これら2報を紹介したいと思います。
Nedd4は神経系に多く発現するHECT型ユビキチンリガーゼで、軸索ガイダンスやシナプス形成をはじめとする様々な神経機能制御に重要であることが示唆されています。本論文では、Nedd4がリン脂質ホスファターゼPTENの分解を誘導し、アフリカツメガエル網膜神経節細胞の軸索分岐を正に制御することを報告しています。まず筆者らは、優勢抑制型Nedd4やNedd4モルフォリノなどを用いて視蓋での網膜神経節細胞の形態を観察したところ、Nedd4の機能阻害が軸索分岐の減少を引き起こすことを見出しました。またこの現象は、Nedd4のターゲットとして既に報告されているPTENのノックダウンでレスキューされること、PTENの過剰発現で網膜神経節細胞の軸索分岐が抑制されることから、Nedd4によるPTEN量の減少が軸索分岐を促進しているのではないかと考察しています。最後に筆者らは、軸索誘導因子であるNetrin-1の刺激がPTEN量の減少、ならびに成長円錐のcollapseを引き起こすことを見出しており、Netrin-1刺激によるNedd4の活性化がPTENの分解とそれに伴うPI3K経路の活性化を引き起こし、網膜神経節細胞の軸索分岐を引き起こしているのではないかという仮説を提唱しています。
PTENのターゲットであるPtdIns(3,4,5)P3はもともと神経細胞の極性に重要であることなどは既に報告されており、今回の結果はそれほどnoveltyがあるようには感じませんでしたが、(根拠となるデータがほとんど無いながらも)Netrin-1がNedd4活性依存的なPTEN分解を誘導し、成長円錐のcollapseを引き起こすという仮説は興味深いと思いました。