PubMedID |
20375281 |
Journal |
Proc Natl Acad Sci U S A, 2010 Apr 7; [Epub ahead of print] |
|
Title |
Trs85 directs a Ypt1 GEF, TRAPPIII, to the phagophore to promote autophagy. |
Author |
Lynch-Day MA, Bhandari D, ..., Ferro-Novick S, Klionsky DJ |
東京工業大学フロンティア研究機構 大隅良典研 角田宗一郎 2010/04/13
Rab GTPase Ypt1とTRAPPIIIはオートファジーに関与している
この論文では酵母のRabタイプGTPaseであるYpt1とそのGEFであるTRAPPIII複合体がオートファジーに必須であることを報告しています。
TRAPPの構成因子であるTrs85を欠損するとオートファジーが抑制されることが2005年に2つのグループから報告されていました(Nazarko et al. 2005 Autophagy, Meiling-Wesse et al. 2005 J Biol Chem)。本論文では初めにゲルろ過と免疫沈降の実験結果から、Trs85がこれまで知られているTRAPP複合体I・IIとは別のTRAPPIIIという新規の複合体の構成因子であると主張しています。
次に温度感受性変異株を用いてYpt1の機能欠損がマクロオートファジーの活性、GFP-Atg8のPAS局在、Ape1の選択的オートファジーを阻害することを示しています。ここで興味深いのが37度でも正常に増殖し膜輸送にもあまり影響が無いとされる変異体ypt1-2おいて、オートファジーが抑制されている点です。このことからypt1-2の変異がオートファジー特異的な機能に影響していることが考えられます。
最後にGFP-Ypt1とTrs5-3xGFPのPAS局在を見ています。Ypt1を過剰発現しているのが気になりますが、TRS85欠損株ではYpt1のPAS局在が見られない点や、Trs85-3xGFPがPAS局在を示すのに対して別の複合体TRAPPIIの構成因子であるTrs65、Trs130ではPAS局在が見られない点はTRAPPIIIが特にオートファジーに関連しているという著者らの考えを支持しています。また補足データで細胞増殖時にYpt1とAtg9が複数の輝点として共局在していることを示しており、Atg9を含む膜の供給源がオートファゴソームを形成する際にYpt1が関与している可能性を示唆しています。
Ypt1やTrs85を含むTRAPPIIIが直接オートファゴソームの膜形成に関わっているかについてはまだ明らかとは言えないですが、以前に著者らがオートファジーに関与するとして報告したCOG(Conserved Oligomeric Golgi)複合体がYpt1のエフェクターとされていることと考え合わせると有力な候補の一つと言えそうです。