PubMedID |
20154084 |
Journal |
J Biol Chem, 2010 Apr 9;285(15);11476-88, |
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Title |
Roles of the lipid-binding motifs of Atg18 and Atg21 in the cytoplasm to vacuole targeting pathway and autophagy. |
Author |
Nair U, Cao Y, Xie Z, Klionsky DJ |
東京工業大学 フロンティア研究機構 (2010年4月~) 大隅良典研 小林孝史 2010/04/28
Atg18とAtg21の脂質結合能に関するお話
酵母Atg18とAtg21は、共にイノシトールリン脂質の分子種の一つであるPtdIns3Pに結合するWD40構造を持つタンパク質である。Atg18は、「栄養状態で働くCvt経路」と「飢餓依存的に働くオートファジー」の両方に必須であることが知られているが、Atg21はCvt経路にのみ必須でありオートファジーには必須でない。
それぞれのタンパク質は、WD構造中の塩基性のFRRGモチーフと呼ばれる部分を介してPtdIns3Pに結合することが示唆されている(Dove et al, 2004)が、Atg18やAtg21のCvt経路やオートファジーに関与する機能は今のところ詳細には解明されていない。
本論文では、Atg18とAtg21のFRRGモチーフに対して、アルギニンを他の塩基性アミノ酸であるリジンと置換したFKKG変異体を作製した。すると、それぞれ単独の変異ではオートファジーに異常が見られなかったが、両方のFRRGモチーフを同時にFKKGに置換した酵母(ATG18(FKKG), ATG21(FKKG))ではオートファジーの進行が見られなくなった。(なお、FKKG変異体はそれぞれPtdIns3P依存的な液胞膜局在が失われる)
筆者らは、オートファジーに関連する23遺伝子を欠失したMKO株(Cao et al, 2008)を用いてAtg8のPAS (pre-autophagosomal structure)様puncta形成を観察した。この実験ではAtg7との結合にAtg4による修飾を必要としないAtg8∆Rを用いているが、Atg8∆Rが「液胞膜に供給される」ためにはAtg18とAtg21のいずれかが必要であり、Atg8∆Rが「punctaを形成する」ためにはAtg18とAtg21の両方が必要であった。
これらの結果から、筆者らはAtg4の機能とAtg18, Atg21の機能の関連について示唆している。Atg4はオートファゴソーム上のPE化Atg8 (Atg8-PE) からPEを外す役割を担うことが知られている。Atg8∆Rが「punctaを形成する」ためにはAtg18とAtg21の両方が必要であるという結果から、Atg18とAtg21が機能しないとpunctaに供給される前にAtg8-PEからPEを外してしまうことによりpuncta形成ができないのではないか?と仮説を立てている。Atg18とAtg21はtwo-hybrid解析で結合が見られることから、この複合体がAtg8-PEをAtg4から守ることによりAtg8のpuncta形成を促進しているのかもしれない。しかし、Atg18-Atg21のターゲットがAtg4にあるという証拠が少なく、強く主張しづらい論文になってしまっている。
個人的にAtg18とAtg21が相互作用するという結果は新しく興味が持てた。Atg18(FKKG)は細胞内局在からPtdIns3Pと結合できていないように見られるのだが、ATG18(FKKG)株はオートファジーの進行に異常が見られないのが不思議だった。次の実験ではFKKG体と脂質結合性のin vitroのデータがほしいと思った。