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PubMedID 20427287 Journal J Biol Chem, 2010 Apr 28; [Epub ahead of print]
Title Mammalian Tti1 and Tel2 are critical factors in mTOR complex assembly.
Author Kaizuka T, Hara T, ..., Natsume T, Mizushima N
東京医科歯科大学 医歯学総合研究科  水島昇研    貝塚 剛志     2010/05/10

mTOR複合体の形成に重要な因子 Tti1 & Tel2
私たちのグループが最近発表した論文をご紹介いたします。

mTORはPIKK(PI3K様キナーゼ)の一種であり、細胞の成長やオートファジーの主要な制御因子です。今回、私たちは新規mTOR結合タンパク質を発見し、分裂酵母に存在していたホモログの名前から、これをTti1と名付けました。Tti1は栄養飢餓やラパマイシンといった刺激の有無に関わらず、恒常的にmTORと結合しており、2種類のmTOR複合体(mTORC1, mTORC2)の双方に含まれていました。また、Tti1のノックダウンはmTORC1とmTORC2の基質の脱リン酸化、及びオートファジーを引き起こしたことから、これらmTOR複合体の機能を正に制御していることがわかりました。

さて、ここで分裂酵母Tti1はTel2の結合因子として報告されていた分子ですが、このTel2の哺乳類ホモログは近年、全てのPIKK(mTOR, ATM, ATR, DNA-PKcs, SMG-1, TRRAP)に結合し、それらを安定化することが報告されていました。私たちは哺乳類Tti1が、分裂酵母ホモログと同様にTel2と結合していること、そしてTel2と共に全てのPIKKに結合し、それらを安定化していることを明らかにしました。

さらに私たちは、Tti1/Tel2のノックダウンがmTOR複合体の解体(mTORとRaptor、及びmTORとRictorの解離)を引き起こすことを発見しました。

以上のことから、Tti1/Tel2はmTOR複合体の形成を促進することで、その活性及び安定性の維持を行っていると考えられます。

なお、本論文とほぼ同時に、横浜市立大の大野茂男先生のグループが、AAA+タンパク質RUVBL1とRUVBL2がTti1(ここではSMG-10という名称で報告されている)に結合すること、全てのPIKKを安定化していること、そしてSMG-1を含むmRNAサーベイランス複合体の形成を促進することを報告しています。このことから、Tti1/Tel2はこれらの分子と協調して、複合体の形成に広く機能しているものと思われます。
   
   本文引用



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