PubMedID |
20403326 |
Journal |
Cell, 2010 Apr 16;141(2);315-30, |
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Title |
Reconstitution of the RIG-I pathway reveals a signaling role of unanchored polyubiquitin chains in innate immunity. |
Author |
Zeng W, Sun L, ..., Xu M, Chen ZJ |
北海道大学大学院 医学研究科 生化学講座 医化学分 畠山鎮次 研 築山 忠維 2010/05/28
フリーのK63ポリユビキチン鎖は、自然免疫系においてRIG-I経路を活性化する上で重要な役割を果たす
Toll-like receptor;TLRは、細胞表面やエンドソームにおいてウィルス成分を認識することで生体防御反応に寄与していることが知られているが、RNAヘリケースの1つであるRIG-I がTLRに依存しないウィルス認識を行っていることが明らかとなっていた(詳しくは審良先生の総説をお読み下さい)。現在までの研究でRIG-Iの活性化にはウィルスRNA、ユビキチンリガーゼであるTrim25によるK63-Ub鎖の形成が関与しており、活性化したRIG-IはMAVsを経由してIRF3の活性化(二量体化)によりINFの誘導を行うことが知られているが、RIG-Iの活性化機構にはまだ不明な点が多かった。
著者らはまず、RNA感染>RIG-I>IRF3経路の活性化を試験管内で再現できる再構成系の構築を行った。
その再構成系においては、ウィルスにより活性化されたミトコンドリア+非活性化細胞質分画でIRF3の活性化が引き起こされるが、非活性化細胞質分画、非活性化ミトコンドリア+ウィルスにより活性化されたRIG-Iによっても同様にIRF3は活性化した。また5’ppp-RNA、 poly(I:C)、もしくはRIG-IのTrim25+Ubc5/13によるK63-UbがIRF3の活性化に必須であることも示した。
また、内在性UbとWT/K63R-UbをTet誘導系を用いて発現置換できる細胞株(Xu, 2009, Mol Cell参照)でも同様にRIG-IのK63-Ubの必要性を示した。
しかし、E1,E2,E3とUbを反応させた後、NEMでUb化活性を消去してからRIG-I(N)と反応した場合や、USP5によりフリーのUb鎖を選択的に分解する(Reyes-Turcu, 2006, Cell参照)とIRF3の活性化は起こらなかったことから、RIG-I自身のK63-Ub化は必要ないことが示唆された。このRIG-I(IRF3)の活性化には、K63-(Ub)3以上のUb鎖が必要である事、RIG-IのCARD2ドメインがK63-Ubnに特異的に結合する。
またRIG-I(N)と異なり、full lengthのRIG-IとK63-(Ub)4は結合しないが、さらに長いK63-(Ub)polyとはRNA, ATP依存性に結合した。またK63-Ubnとの結合と、IRF3活性化やINF誘導能はlinkしていたことから、RIG-IのK63-Ubnとの結合はcriticalであることが示された。さらに細胞内においてもRIG-I(N)とK63-Ub鎖との結合が示されるとともに、K63-Ub鎖がRIG-I(N)のCARD2ドメインに結合すると、脱ユビキチン化酵素からK63-Ub鎖が保護され、活性化状態が維持される可能性も示唆された。
これらの結果を総合すると、RNAウィルス感染細胞はRIG-IのC末に存在するRDドメインで感染RNAと結合することで二量体を形成するとともに、RIG-IのN末のCARDドメインでE1-Ubc5/13-Trim25によって生成されたフリーのK63-Ubnと結合する。K63-Ubnと結合し活性化したRIG-Iは、MAVsを通してIRF3によるINF産生や、NF-κBによる炎症性サイトカインの産生を引き起こす。このウィルス感染にたいする自然免疫反応において、RIG-I自身のUb化ではなく、基質上に固定されていないフリーのK63-Ubn鎖(K63-Ub3以上)がシグナル分子として機能していることが示された。
著者らが構築した再構成系は非常にクリアにデータを出すことが出来ているが、RIG-IのCARDドメインのK63-Ubn鎖保護機能についてのデータやその解釈には、少しスッキリしない点が残るため、さらなる解析が望まれるように思う。