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PubMedID 20478256 Journal Cell, 2010 May 14;141(4);656-67,
Title Mitochondria supply membranes for autophagosome biogenesis during starvation.
Author Hailey DW, Rambold AS, ..., Kim PK, Lippincott-Schwartz J
東京工業大学 フロンティア研究機構  大隅良典研    中戸川 万智子     2010/06/01

ミトコンドリアがオートファゴソームの膜の供給源である!?
オートファゴソームの膜の供給源としては、最近ERが強力な候補として考えられていると思いますが、著者らはミトコンドリアも候補の一つである可能性を挙げています。

この論文では、一貫してNormal Rat Kidney cell lineを使っています。Fig. 1、Fig. 2ではこの細胞でオートファゴソームがどのように観察されるのかを丁寧に調べています。飢餓に応じてLC3がリング状に見え、何かを包み込むように動きながら変化した後、オートファゴソームが形成される様子がとてもきれいな動画として示されていました。Fig. 3では、early endosome、Golgi、TGN、ERおよびミトコンドリアの膜タンパク質とLC3との共局在を調べた結果、ミトコンドリア外膜タンパク質であるYFP-Mito(cb5)TMのみがLC3と共局在したという、この論文のきっかけとなるデータが示されていました。当然、マイトファジーを見ている可能性も考えられる訳ですが、ミトコンドリアの外膜タンパク質はLC3と共局在するが、マトリクスや内膜タンパク質は共局在しないこと、マイトファジー誘導時に見られるミトコンドリアの質量の減少が、(YFP-Mito(cb5)TMとLC3の共局在が見られる条件である)飢餓時には見られないことなどから、マイトファジーとは別の現象であると議論しています。また、LC3の輝点がミトコンドリアに接する部分から見え始め、大きくなること、しかしながら、LC3の輝点から、共局在するYFP-Mito(cb5)TMが拡散し得るのは一時的であることから、オートファゴソーム形成のごく初期にミトコンドリア外膜から膜が供給され、そこを起点にしてオートファゴソームが成熟するのではないかと考えているようです。脂質の供給に関しては、NBD-PSとmitofusin 2のKO細胞を使った実験から、その重要性を示しており、ERで合成されたPSがミトコンドリアに渡り、そこでPEとなったところにLC3が結合するというモデルを示していました。最後に、飢餓時にLC3との共局在が見られる膜タンパク質の特徴として、TM部分が、脂質二重膜を貫通せず、ミトコンドリア外膜のouterleafletに銛の先のようにかかるものであることを示していました。もし、彼らが予想するように、ミトコンドリア外膜のouterleafletからオートファゴソームへ膜が供給されているとすると、そこからどのようにしてオートファゴソームの二重膜構造が出来るのか想像し難いですが、酵母Atg8がhemifusionしか引き起こせないことを考えると、興味深い結果だと思いました。
   
   本文引用

1 東京医科歯科大学、細胞生理学分野  水島昇研  板倉英祐 オートファゴソーム膜はミトコンドリア外膜からも供給される? 2010/06/23
我々のラボで本論分をジャーナルクラブに取り上げたので、見解を投稿したいと思います。

本論分ではイメージングを駆使してミトコンドリア外膜とオートファゴソームが繋がっていると主張しています。主に3種類のデータに基づいております。
1、YFP-MitoCb5(ミトコンドリア外膜タンパク質マーカー)が飢餓誘導CFP-LC3と共局在することから、ミトコン外膜がオートファゴソームと繋がっている。
2、NBD-PS(蛍光ラベルしたホスファチジルセリン)がmCherry-LC3と共局在することから、ミトコン上でPSから産生されたPE(フォスファチジルエタノールアミン)がオートファゴソームに供給された。
3、Mitofusin2(ERとミトコンを繋げると考えられるタンパク質)欠損細胞で飢餓誘導LC3ドットが減少したことから、ERからミトコンに供給される脂質がオートファゴソームに供給されると結論しております。

しかしながら
1の点に関して、
冒頭でAtg5を初期マーカーといっているにもかかわらず、ミトコンとAtg5の局在を観察していない。またERとオートファゴソームの構造が3Dトモグラフィーで解析されたことから、ミトコンとオートファゴソームの構造も3Dトモグラフィーまたは彼女らが使用している超解像度顕微鏡(PALM)などで解析されていればよかった。
2の点に関して
NBD-PSがPEに変換されLC3とコンジュゲーションすると推測しているが、実際にLC3とNBD-PEが結合したデータがない。またNBD-PSが直接ERからオートファゴソームに移行している可能性もある。
3の点に関して
Mitofusin2欠損細胞でミトコンの脂質が不足しているというデータがない。またこのときミトコンのPEがオートファゴソームに供給されていないと推測しているが、実際にLC3-PEの形成が抑制されているのか観察していない。

彼女達の結論を主張するには十分なデータが足りないことから、我々にはこれらの結果からだけではミトコンがオートファゴソームの膜の供給源となっていると結論づけられませんでした。特に生化学的なデータが全くないのが痛いです。




      
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