PubMedID |
20550938 |
Journal |
Cell, 2010 Jun 11;141(6);1042-55, |
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Title |
C. elegans screen identifies autophagy genes specific to multicellular organisms. |
Author |
Tian Y, Li Z, ..., Yu L, Zhang H |
東工大・統合研究院 大隅良典研 鈴木 邦律 2010/06/23
多細胞生物特異的なオートファジー遺伝子
オートファジーの研究は,出芽酵母においてオートファゴソーム(以下AP)形成に関わる多数の遺伝子が同定されたことにより,大きな発展を遂げた.
近年,哺乳動物細胞の解析が進むにつれ,哺乳動物細胞にはPASが見られない,同時多発的にAPが形成される,Omegasomeと呼ばれる構造が存在する,リソソームと融合する前にmaturationのステップがある等,出芽酵母のAP形成との違いが散見されるようになってきた.著者らは,この違いは単細胞生物と多細胞生物の間のギャップによると考え,多細胞動物のモデルとしてC. elegansを用いて変異体を取得した.
C. elegansにはAPの選択的積荷としてgermline P granule(PGL-1, PGL-3, SEPA-1がマーカーとなる)とT12G3.1(p62 homolog)がある.PGL-1, PGL-3, T12G3.1とGFPとの融合タンパク質を発現している株を用い,EMSによる変異処理後,各々について約10,000株を顕微鏡観察(合計約30,000株)し,選択的積荷の分解に異常を来した結果,凝集体(PGL granule)が細胞内に蓄積した約160株の変異体を得た.機能相補により遺伝子を同定したところ,出芽酵母と共通な遺伝子も取得されたが,多細胞動物特異的な遺伝子が5種類同定された(epg, ectopic PGL granules).このうち4種類の機能解析をし,それぞれの遺伝子産物がオートファジーのどのステップに働いているかをC. elegansと哺乳動物細胞を用いて解析した.
epg-2は線虫特異的な遺伝子であり,PGL granuleをAPにターゲティングさせるのに必要である.epg-3(哺乳動物細胞ではVMP1)とepg-4(哺乳動物細胞ではEI24)はOmegasomeの消失に長い時間を要することから,隔離膜の伸展からAPが閉じる辺りのステップに働いていそうである. epg-5はオートリソソームの形成までは進行するが,分解活性が低下していることにより,オートファジー不能の表現型が出ているようである.epg遺伝子は,DrosophilaやArabidopsisなどにもホモログが存在することから,多細胞真核生物のオートファジーの分子機構を解析する上での重要な因子と期待される.