PubMedID | 20639694 | Journal | Autophagy, 2010 Aug 18;6(6); [Epub ahead of print] | |
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Title | Characterization of autophagosome formation site by a hierarchical analysis of mammalian Atg proteins. | |||
Author | Itakura E, Mizushima N |
今回受理された我々の論文を紹介させていただきます。
哺乳類オートファジーに関わる遺伝子として、酵母から保存されているAtg遺伝子と高等生物特異的なDFCP1やFIP200(Atg17のホモログ?)が近年の研究から発見されましたが、これらのタンパク質間に階層関係があるかどうかはわかっておりませんでした。
今回、オートファジータンパク質をULK1-FIP200複合体、Atg14-Vps34複合体、Atg12-5-16複合体、DFCP1、WIPI-1、そしてLC3の6つのグループに分類し解析しました。結果として、ULK1-FIP200を最上流として、Atg14, WIPI1-DFCP1, Atg16L1, LC3の順に階層関係があることがわかりました(基本的に大隅研鈴木先生の酵母階層構造と同じ)。
興味深い点はULK1とAtg14はPI3K阻害剤であるwortmannin非依存的にドットを形成することができ、そのドットは小胞体近傍に存在することです。さらにこのwortmannin耐性ドットには小胞体膜タンパク質であるVMP1も存在することがわかりました。これらのことから哺乳類オートファゴソーム形成サイトは小胞体近辺に存在し、そこから形成されることを示唆しております。現在どのようにしてオートファゴソームが小胞体から形成されるのか、その詳しい分子機構に迫りたいと考えております。
余談になりますが、この論文は昨年秋ごろから中堅雑誌を狙い投稿していたのですが、なかなかアクセプトされず苦労しました。本論分には、Atg5 KO細胞でWIPI-1&DFCP1構造体が蓄積していることや、Beclin 1複合体であるAtg14(一部のグループではBeclin 1の発現がオートファジーの誘導を調節していると考えられている)よりもFIP200複合体が上流に存在すること、DFCP1のオメガソーム形成はFIP200-ULK1複合体に依存していることなど、ちょくちょく面白い部分や発展的な内容も含んでいるのですが、今回階層構造関係ということで、これらをまとめた論文を意気揚々と書いたところ、これが私の首を絞めてしまったようです。またところどころすでに分っているところを律儀に「previously reported」などと説明していたところ、レフェリーにpreviousが多すぎると怒られたり(そのときの本文中にpreviousが16回登場。確かに多いけど)、免疫染色ばかりのデータだったため生化学データがないと文句を言われ、全体として内容が新しくなく浅い論文という印象で解釈されてしました。さらに粘ったのがよくなかったのか、投稿回数5回(5雑誌)は水島昇研の論文中歴代一位に輝くという不名誉までゲットしてしまい、最終的にAutophagyに載ることになりました。
論文の評価は雑誌名でなく、その内容できっと判断してくださると信じて、板倉は次の研究に励みます。せめてもの救いは、これから皆様がオートファジー(特にオートファゴソーム形成)の論文を書き上げたときに、この哺乳類ヒエラルキー論文を引用してくださると、苦労が報われたなぁと思います。
是非ともそのときはよろしくお願いします。
(余談の方が長くなってしまった。。。)
1 | 東京工業大学・フロンティア研究機構 大隅良典研 鈴木邦律 | 哺乳動物細胞のPAS | 2010/07/26 |
哺乳動物細胞をWortmannin処理したり,下流のATG遺伝子を破壊したときに,ULK1やAtg14の局在を観察すると,隔離膜の伸展が全く見られず,その代わりにPASに相当するドットを観察できる,という理解でよろしいでしょうか?
哺乳動物細胞のPASは隔離膜形成に先だって極めて短期間に存在するようなものなのかもしれませんね. もうひとつ疑問なのは,出芽酵母PASのscaffold proteinsであるAtg11やAtg17が隔離膜に局在しないと思われるのに対し,哺乳動物のFIP200が隔離膜に局在する点です. 出芽酵母と哺乳動物細胞の間で隔離膜の伸展メカニズムが異なると考えるのか,それとも別の要因を考えるのか,その辺りはどのような印象をお持ちでしょうか? |
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2 | 東京医科歯科大学、細胞生理学分野 水島昇研 板倉 英祐 | 哺乳類のPAS | 2010/07/26 |
コメントありがとうございます。
wortmannin処理細胞において、電子顕微鏡レベルで隔離膜形成が抑制されることを確認しております。おっしゃるとおり、その時でも形成される ULKのドットが哺乳類オートファジーのPASに相当すると考えております(酵母の場合はほとんどのAtgが集まるドットがPASなので、少し定義が異なってしまうわけですが)。 2つ目の質問ですが、哺乳類ではFIP200が隔離膜に局在すると思われます。そして我々はULK1とFIP200が違う働き、局在をしているというデータを少なくとも現在はもっていません。そのため今のところはFIP200はULK1に必要な因子としか言えません。 これらのことも含めて、PASの場所や数など酵母と哺乳類の異なる点が、それぞれのオートファゴソーム形成に違いを与えているのかそうではないのか、興味深い点だと思います。 |
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