PubMedID |
20833710 |
Journal |
J Biol Chem, 2010 Sep 10; [Epub ahead of print] |
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Title |
Contribution of K11-linked ubiquitination to MIR2-mediated MHC class I internalization. |
Author |
Goto E, Yamanaka Y, ..., Hirano H, Ishido S |
理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター 感染免疫応答研究チーム(石戸聡チーム) 後藤 栄治 2010/09/16
エンドサイトーシスを誘導する新たなポリユビキチン鎖
最近受理された我々の論文を紹介させていただきます。
我々は、免疫制御の中心的分子である主要組織適合抗原(MHC)をユビキチン化する事によりエンドサイトーシスを誘導するE3ユビキチンリガーゼ(E3)ファミリー(MIR)を見出し、その機能解析を行なっています。MIRファミリーは、E3触媒ドメインとしてRING variant type であるRING-CHドメインを持ち、分子中央に二つの膜貫通ドメインを二つ持つ膜結合型E3として機能しています。今回我々は、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)のE3であるMIR2がどのような分子機構でMHC class I (MHC I)をエンドサイトーシス経路へと導いているのかについて検討を行いました。以下に得られた知見を示します。
1)MHC Iは細胞内領域に3つのリジン残基が存在するが、MIR2によるエンドサイトーシスに必要なユビキチン化の部位は一番膜貫通領域に近い335番目のリジン残基だけであった。
2)MIR2によりユビキチン化されたMHC Iはエンドサイトーシス関連分子のepsin1と結合した。また、siRNAによるepsin1のノックダウンはMIR2によるMHC I のエンドサートシスを抑制した。
3)epsin1に結合している機能的なポリユビキチン鎖が付いたMHC Iのみを回収し、定量的質量分析法を用いて、ポリユビキチン鎖の解析を行った。その結果、K11リンクとK63リンクを示すペプチドが検出された。
4)K63のユビキチン変異体(K63R)を発現させた場合は、2つ以上のユビキチンが付加されているポリユビキチン鎖(Ubi2以上のすべて)の形成が抑制されていた。一方、K11のユビキチン変異体(K11R)を発現させた場合では、3つ以下のユビキチンが付加されているユビキチン鎖の形成には変化は見られなかったが、4つ以上のユビキチンが付加されたユビキチン鎖(Ubi4以上のすべて)の形成が抑制されていた。さらに、定量的質量分析法により、MHC Iに形成されたUbi2のバンドからはK63リンクを示すペプチドが、Ubi4のバンドからはK11リンクを示すペプチドとK63リンクを示すヘプチドの二つシグナルが同定された。
5)MIR2を安定的に発現している細胞(MIR2により細胞表面のMHC Iの発現が抑制されている細胞)に、GFPタグのついたユビキチン変異体を導入し、細胞表面のMHC Iの発現をフローサイトメトリーにより検討を行った。その結果、ユビキチン変異体K11R, K63Rを導入した場合のみ、MHC Iの発現抑制がレスキューされた。
これらのことから、MHC Iの335番目のリジン残基に形成されるポリユビキチン鎖は、3番目まではK63リンクで形成され、3番目と4番目の間はK11リンクで形成された、これまでに報告されていない新しいタイプの混合型リンクを持つポリユビキチン鎖(K11/K63混合型ポリユビキチン鎖)であることが強く示唆された。そして、このK11/K63混合型ポリユビキチン鎖は、エンドサイトーシス関連分子のepsin1をリクルートすることにより、エンドサイトーシスのシグナルとして機能していると考えられた。
今後、K11/K63混合型ポリユビキチン鎖が形成される意義を明らかにすることが、我々に課せられた重要な課題であると考えています。