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PubMedID 20849418 Journal FEBS J, 2010 Aug 24; [Epub ahead of print]
Title Autolytic activity of human calpain?7 is enhanced by ESCRT-III-related protein IST1 through MIT-MIM interaction.
Author Osako Y, Maemoto Y, ..., Shibata H, Maki M
名古屋大学大学院生命農学研究科応用分子生命科学専攻  牧正敏研    大迫洋平     2010/10/04

ヒトcalpain 7のプロテアーゼ活性検出
 最近acceptされた私達の論文について紹介させていただきます。
ヒトcalpain 7はN末端側に2つの連続するMIT (microtubule interacting and transport) ドメインをもつ非典型的なcalpainです。calpain 7は生体内でユビキタスに発現しており生命現象の基本的な部分に関わっていることが期待されるものの、in vitro, in vivoのいずれにおいても基質が見つかっていないために生体内での機能はおろか、プロテアーゼ活性の有無すら不明でした。
 本研究では、1) calpain 7はMITドメインを介してESCRT-IIIとよばれるタンパク質複合体の周辺因子、IST1のMIM (MIT interacting motif) と直接結合すること, 2) N末端に単量体GFPを融合したcalpain 7は自身を基質として切断 (自己消化) し、この自己消化はin vitroにおいてcalpain 7-IST1相互作用により促進されることを明らかとし、これまで証明されていなかったcalpain 7のプロテアーゼ活性の検出に初めて成功しました。
 生理的基質の同定には至らなかったため、残念ながらcalpain 7の機能に言及することはできませんでしたが、IST1は以前に我々がcalpain 7の相互作用因子として報告したCHMP1Bと同じくESCRT-III関連因子であり、IST1、CHMP1B、およびESCRT-IIIはいずれも細胞質分裂 (娘細胞同士がくびり切れる段階) への関与が示唆されていますのでcalpain 7も細胞質分裂に何らかの影響を与えはしないかと想像が膨らみます。
 一方で、現段階では自己消化効率は極めて悪く、calpain 7の酵素学的な性質を詳細に解析するにはまだ難があります。また、何といっても生理的基質の同定が今後の研究を展開させるための大きなポイントになりますので、calpain 7が最大限に活性化する条件の検討 (calpain 7の活性化メカニズムの解明と言い換えてもよいかも知れません) と生理的基質の同定を目指して研究を進めているところです。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局