PubMedID |
20676083 |
Journal |
Nature, 2010 Aug 26;466(7310);1120-4, |
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Title |
A ribosome-associating factor chaperones tail-anchored membrane proteins. |
Author |
Mariappan M, Li X, ..., Keenan RJ, Hegde RS |
首都大・理工・生命科学 細胞生化学 川原裕之 2010/11/08
BAT3は新合成膜蛋白質のアッセンブリに必要な疎水特異的シャペロンである
本論文にはタンパク分解の話は直接出てこないのですが、私どもが先日、新合成不良タンパク質の認識と分解に関わる新因子として発表したBAT3/BAG-6の機能に関連する内容が含まれています。
多くの膜蛋白質には、膜貫通領域と呼ばれる約20残基長の疎水性配列が見いだされます。リボソームで合成された直後の膜蛋白質が凝集してしまわないためには膜貫通(疎水)領域の保護が大切なわけですが、従来その機構は十分に明らかではありませんでした。本論文では、リボソームで新合成された直後の膜蛋白質の疎水性領域を認識する新因子として、BAT3(BAG-6の別名)を同定しています。
Mariappanらは、C末端に膜貫通領域を持つ蛋白質のモデルとしてSec61bを用い、クロスリンク法を使って合成直後のSec61bと相互作用するタンパク質を探索するストラテジをとりました。結果として見いだされたのは、BAT3/BAG-6とその新しい結合因子Ubl4a, TRC35でした。BAT3/BAG-6複合体はリボソームから放出されつつある新合成ポリペプチドの疎水性領域を捕まえ、TRC40という膜蛋白アッセンブル因子に手渡すことで、凝集を防ぎながら小胞体膜への輸送(とアッセンブリ)を可能とします。逆にこれらが欠損すると膜蛋白質のアッセンブリに失敗すると同時にシビアな凝集体を形成します。すなわち、BAT3/BAG-6複合体は、C末端に膜貫通領域を持つ蛋白質を凝集させないようにエスコートする新規シャペロンと考えられました。
新合成膜蛋白質に露出された疎水性部分を認識した後、BAG-6/BAT3がその運命を決定(膜へのアセンブリ、凝集、あるいは分解)に必須の役割を示しているという点で、細胞内新生蛋白質の品質管理へのBAG-6/BAT3の寄与が示されていると考えます。BAG-6/BAT3が、如何にターゲット蛋白質の運命を決定しているかの機構を明らかにすることが今後の重要な課題と考えます。