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PubMedID 17208179 Journal Curr Biol, 2007 Jan 9;17(1);1-11,
Title Direct induction of autophagy by Atg1 inhibits cell growth and induces apoptotic cell death.
Author Scott RC, Juhasz G, Neufeld TP
東京医科歯科大学医歯学総合研究科   細胞生理学分野(水島研)    細川 奈生     2007/03/20

ショウジョウバエにおけるAtg1の過剰発現による効果
Atg1は数あるオートファジー関連遺伝子の中でもキナーゼ活性を持ち、多くの関連タンパク質と相互作用するタンパク質である。このため、オートファジーの開始シグナルや膜の伸長など多段階でオートファジーを制御する中心的因子の一つであると考えられている。本論文では、ショウジョウバエを用いた実験からAtg1の過剰発現によってオートファジーが亢進すること、アポトーシスによる細胞死が誘導されること、細胞成長が阻害されること、そしてこれらの効果はAtg1のキナーゼ活性に依存することを報告している。また、哺乳動物細胞での実験と同様に、ショウジョウバエにおいても飢餓時の細胞サイズ縮小にオートファジーが必要であることを示した。
さらに興味深いことに、Atg1の過剰発現によってTor下流因子であるS6Kのリン酸化が阻害された。これはAtg1からTorシグナルへのネガティブフィードバック経路の存在を示唆している。しかもAtg1のS6Kリン酸化阻害効果は部分的ではあるがキナーゼ活性に依存しなかった。
これまで、Atg1のキナーゼ活性はオートファジーに必須であるかどうか議論が分かれていた。今回、Atg1にはキナーゼ活性に依存する機能と依存しない機能があり、少なくともショウジョウバエにおいてはオートファジーの誘導はAtg1のキナーゼ活性に依存すること、一方S6Kのリン酸化へのフィードバック効果には完全には依存していない可能性が示された。著者らは、S6K-/-でオートファジーが誘導されないことから、S6Kがオートファジーに必要であることをすでに報告している。Tor、S6K、Atg1はこれまで明らかとなっている経路とは異なる経路でオートファジー誘導に関与しているのかもしれない。これらの因子周辺の今後の解析が待ち遠しい。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局