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PubMedID 21045113 Journal J Cell Sci, 2010 Nov 2; [Epub ahead of print]
Title Atg8 regulates vacuolar membrane dynamics in a lipidation-independent manner in Pichia pastoris.
Author Tamura N, Oku M, Sakai Y
京都大学大学院農学研究科、応用生命科学専攻、制御発酵学分野  阪井研    田村 直輝     2010/11/10

脂質化に依存しないAtg8の新しい機能: 液胞融合
 最近、受理された我々の論文を紹介させていただきます。Atg8はPASやオートファゴソームのマーカーとして広く用いられているAtg分子です。Atg8はシステインプロテアーゼであるAtg4によりC末端が切断され、Atg7を含んだユビキチン様反応によってC末端が脂質化されます。本論文では、メタノール資化性酵母 Pichia pastoris のPpAtg8がオートファジーとは独立して、液胞融合を制御していることを報告しました。以下に、要点をまとめました。
(1)オートファジーとは独立したPpAtg8の機能
 PpATG8遺伝子を破壊した細胞は異常な液胞形態を示し、液胞融合が起こらなかった。この表現型はPpATG1やPpATG7など、主要なPpATG破壊株には見られないが、PpATG8破壊株の他、PpATG4破壊株にも見られた。リポソームにアンカーした出芽酵母ScAtg8はtethering-hemifusion反応を触媒し、この触媒活性に必要なアミノ酸残基が同定されている (Nakatogawa et al., Cell (2007))。同様のPpAtg8変異体は、PpATG8破壊株のin vivoでの液胞融合能を相補せず、PpAtg8の触媒活性が液胞の形態制御に必要であることが分かった。
(2)脂質化は必要ないがC末端切断は必要
 PpATG7破壊株やPpAtg8のC末端の脂質化部位であるGly116を欠失させた変異体でも液胞形態が正常であったことから、PpAtg8を介した液胞融合に、その脂質化は必要ないことがわかった。PpAtg8は117番目以降にPpAtg4により切断される9アミノ酸残基を持つ。PpATG4破壊株の表現型から、PpAtg4によるこのペプチドの切断が、液胞融合に必要であることがわかった。このペプチド配列内には、Atg8と相互作用するAtg19、p62が持っているWXXLモチーフに似た配列が存在した。以上の結果は、PpAtg8 C−末端ペプチドが、プロ配列様の機能を持っていることを示している。
   
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