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PubMedID 20956561 Journal Mol Cell Biol, 2010 Dec;30(24);5598-607,
Title Endocytosis of the Aspartic Acid/Glutamic Acid Transporter Dip5 Is Triggered by Substrate-Dependent Recruitment of the Rsp5 Ubiquitin Ligase via the Arrestin-Like Protein Aly2.
Author Hatakeyama R, Kamiya M, Takahara T, Maeda T
東京大学分子細胞生物学研究所膜蛋白質解析研究分野  前田達哉研    畠山理広     2010/11/25

本領域に参加させていただいている酵母カルパインRim13のテーマとは外れるのですが、エンドサイトーシスを介した膜タンパク質の分解に関する私たちの新しい論文をご紹介させてください。本論文では、酵母においてアミノ酸トランスポーターが高濃度の基質アミノ酸に応答して分解を受ける際に、最初のイベントとしてHECT型ユビキチンリガーゼRsp5(酵母NEDD4ホモログ)がアダプター分子を介してリクルートされることを明らかにしました。

1. 背景
細胞は細胞内の栄養源プールの恒常性を保つために、それらの取り込み能を環境に応じて調節します。取り込み調節の主要な手段として、細胞膜に局在するトランスポーター分子の量の制御があります。特定の栄養源が過剰にある条件下では、その栄養源を輸送基質とするトランスポーターを速やかに分解することで取り込みを抑制します。トランスポーターが分解される際には、まずエンドサイトーシスによって細胞内へと取り込まれ、そののち液胞(リソソーム)へと送られます。その最初の段階でエンドサイトーシスシグナルとなるのがトランスポーター自身のユビキチン化修飾です。しかしユビキチン化が基質の多寡によって制御される機構はこれまでわかっていませんでした。

酵母では知られている限り全てのトランスポーターのユビキチン化が単一のE3ユビキチンリガーゼRsp5によって担われます。ただしRsp5はトランスポーターと直接には結合しません。2008年にEmrグループにより、両者を物理的につなぐアダプター分子として10個のタンパク質からなるアレスチン様タンパク質ファミリーが見出されました(名前の由来である哺乳類アレスチンはGPCRのリガンド依存的なエンドサイトーシスに関わります)(Cell 135: 714-725, 2008)。しかし、このアダプター分子を介して、どのように刺激に依存したエンドサイトーシスの調節が行われているかは分かっていませんでした。

2. 結果
本研究では酵母アレスチン様タンパク質ファミリーのうち、未解析であったAly2の機能解析を行いました。その結果、Aly2の標的としてアスパラギン酸・ グルタミン酸トランスポーターDip5を同定しました。Aly2はDip5の正常なユビキチン化とエンドサイトーシス、および分解に必要であり、またDip5とRsp5の両者と共沈降したことから両者をつなぐアダプター分子として機能すると考えられました。さらに細胞をDip5の基質であるアスパラギン酸で刺激するとAly2とDip5との結合量が増加しました。このことからAly2は基質依存的にRsp5をDip5へとリクルートし、それによってDip5のユビキチン化を促進すると考えられます。

3. まとめ
本研究により、トランスポーターの分解制御のキーポイントはユビキチンリガーゼアダプターとの結合制御であることが示唆されました。この結合の制御機構を解明することが次の課題だと考えています。

また、酵母カルパインRim13が刺激(環境のアルカリ化)に応答して活性化されるには、細胞膜に存在するセンサー様分子に加え、このアレスチン様タンパク質ファミリーのメンバーであるRim8が必要です。本論文で明らかにした知見を踏まえると、Rim8が刺激に応答してセンサーにリクルートされることが経路活性化の最初のイベントであるというモデルは考えやすいのですが、そのことに否定的な報告もあります。免疫共沈よりも時間分解能と感度に優れた膜タンパク質相互作用検出法を導入してこの問題に決着を付けたいと考えています。
   
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局