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PubMedID 21264221 Journal PLoS One, 2011;6(1);e16054,
Title Possible Existence of Lysosome-Like Organella within Mitochondria and Its Role in Mitochondrial Quality Control.
Author Miyamoto Y, Kitamura N, ..., Ichinose S, Arakawa H
国立がん研究センター研究所  腫瘍生物学分野    荒川 博文     2011/01/27

ミトコンドリア内リソソーム様活性の存在の可能性とその意義
2011年1月に、掛川・つま恋で開催されました第6回オートファジー研究会において発表させて頂きました仕事です。水島先生からのご紹介により、このフォーラムでも報告させて頂きます。

この論文は、ミトコンドリアの中に、リソソーム様の活性が存在し、その活性がミトコンドリア内の酸化修飾タンパク質の分解に関わっているのではないか、という内容です。

我々はがんの研究者で、特にp53によって発現誘導される標的遺伝子についての解析を専門にしております。今回報告しましたMieap遺伝子も、その過程で見つかりました新規p53標的遺伝子です。興味深いことにMieapは多くのヒトがん細胞株において、そのプロモーターのメチル化で、発現が消失しており、発見当初より、がん抑制遺伝子としての機能を推測しておりました。最も驚いた結果は、論文のFigure 3とFigure 4のデータです。Figure 3にお示ししましたように、蛍光顕微鏡観察において、Mieapの発現に依存して、細胞へのガンマ線照射後3日目〜5日目をピークとして、LAMP1及びカテプシンDのシグナルがミトコンドリアへ集積して参りました。この時点で、我々はミトコンドリアのオートファジーが誘導されたと考えました。ところが、Figure 4の電子顕微鏡観察では、この予想を全く裏切り、リソソームが集積しているはずのミトコンドリアは、形態学的に全く正常のミトコンドリアの像を呈しておりました(当初は実験の失敗と考えましたが、何回行っても、何枚写真を撮っても同じ結果でした)。その後の免疫電顕及び生化学的解析で、やはりミトコンドリア内には、Mieap依存的にリソソームタンパク質の集積が起こっており、この現象はミトコンドリア内の酸化修飾タンパク質の除去と強く関係している可能性が高い、と結論づけました。

この現象は、現在の細胞生物学の知識では説明不可能で、我々の考える仮説(Figure 9)にありますように、(1)細胞質のリソソームがどの様なメカニズムでミトコンドリア内へ移動したのか、また、(2)ミトコンドリア内のリソソーム様器官が存在したと仮定して、ミトコンドリア内の酸化修飾タンパク質をどの様なメカニズムで除去したのか、などの大きな疑問が未解決となります。

2年近く様々な雑誌への投稿を続けて参りましたが、予想に違わず、レビュワーからのネガティブな反応は多大で、それに応える実験を繰り返すうちに、結果的に論文を二つに分けての発表となりました。様々なご意見・ご質問など頂けましたら大変にありがたく存じます。何卒よろしく御願い申し上げます。
   
   本文引用



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