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PubMedID 21264228 Journal PLoS One, 2011;6(1);e16060,
Title Mieap, a p53-Inducible Protein, Controls Mitochondrial Quality by Repairing or Eliminating Unhealthy Mitochondria.
Author Kitamura N, Nakamura Y, ..., Ichinose S, Arakawa H
国立がん研究センター研究所  腫瘍生物学分野    荒川 博文     2011/01/27

修復と排除:p53誘導性タンパク質Mieapによる新規ミトコンドリア品質管理機構
ミトコンドリア内のリソソーム活性に関する論文に続く、続報の形となった論文です。この論文では、ミトコンドリア内へのリソソーム様活性の誘導のメカニズムに関する知見と、一方でMieapが液胞様構造物を細胞質に誘導し、ミトコンドリアを分解する現象を報告しました。

我々は、Mieapがミトコンドリア内へリソソーム様活性を誘導する現象を、MALM (Mieap-induced Accumulation of Lysosome-like organelles within Mitochondria)と命名しました。電顕観察では、形態学的に、我々の想像しうるリソソームと断定できる構造物を、今のところ確認できておりません。しかし、(1)免疫電顕においては、リソソーム膜タンパク質を含む、解析を行った4つのリソソームタンパク質(LAMP1, LAMP2, Cathepsin B, Cathepsin D)すべてにおいて、ミトコンドリア内の存在を確認していること、(2)蛍光染色法におけるミトコンドリアの酸性化の確認、(3)酸化修飾蛋白質の分解との関連性、の3点を考慮して、ミトコンドリア内に、機能的リソソームあるいはリソソーム様の小器官が存在すると仮定しております。現時点では仮定の話であることを前提にMALMと命名されていることをご承知おきください。

MALMはある種のミトコンドリア修復機構であると想像しておりますが、不良なミトコンドリアがどの様なメカニズムで認識されるのか、についての手がかりを得ました。一つは、ミトコンドリアから産生される活性酸素(ROS)のレベルであり、もう一つは、ミトコンドリア外膜タンパク質であるNIXが重要でありました。おそらく、不良なミトコンドリアから産生された高いレベルのROSが、ミトコンドリア外膜にあるNIXを修飾することによって、修飾型NIXが生じ、これにMieapが結合することで、不良なミトコンドリアを認識していると想像しております。

次に、Mieapに関して別の興味深い現象を観察しました。Mieapを過剰発現させると細胞質に液胞様の構造物(MIVと命名)が出現し、ミトコンドリアを取り込んで分解することが分かりました。この現象は、過剰発現させたときだけでなく、NIXをノックダウンして、MALMによるミトコンドリアの修復を不可能にした細胞において、ガンマ線を照射した際にも、内在性のMieap依存的に、顕著に出現することが分かりました。さらに通常の細胞にガンマ線を照射した際にも、MALMに混じって一部MIVが出現していることも確認しました。MIVとmitophagyの関係は、今のところ不明ですが、3MAやLY294002などのPI3K inhibitorでMIV形成が抑制されること、Alexa488-EGFがMIV内へ集積してくることから、エンドサイトーシス経路とエンドソームの形成過程がMIV形成に関与するのではないかと推測しております。

この論文も、未だ不明な点が多いのですが、少しずつでも、我々の観察している現象が何者なのかを明らかとして、引き続きご報告させて頂きたいと思います。ご意見ご質問などありましたら、是非お寄せ頂ければ誠に幸いに存じます。何卒よろしく御願い申し上げます。
   
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