PINK1/Parkin が担うミトコンドリアダイナミクスと品質管理

以前、こちらのフォーラムで報告させていただきました(Narendra et al., 2008 JCB)、ユビキチンリガーゼParkin が制御するミトコンドリア品質維持機構（主にミトコンドリア選択的オートファジー、マイトファジー）についての続報を紹介させていただきます。

昨年末に滑り込みで発表させていただきましたこの論文では、

・ユビキチンリガーゼParkin が、ミトコンドリアキナーゼPINK1 依存的に脱分極した（機能不良）ミトコンドリアに局在した後に、ミトコンドリア外膜融合因子であるMitofusin をユビキチン・プロテアソーム経路で修飾・分解すること
・Parkin によるMitofusin の分解にはAAA ATPase p97/VCP が関与すること

を報告しました。

これらの結果から、ミトコンドリア膜電位の脱分極に始まるPINK1/Parkin が引き起こす一連の機能不良ミトコンドリア駆除機構には、ミトコンドリアダイナミクス、特にミトコンドリアの断片化が有利に作用している可能性が考えられました。
また、これまでERAD（ER-associated degradation) では報告されていたp97/VCP が、ミトコンドリアでも外膜のユビキチン化タンパク質の分解に（少なくともMitofusin には）必要でもあることから、我々のグループではこれをOMMAD(Outer mitochondrial membrane associated degradation) としてさらなる解析を進める予定です。


以下に、当論文以外の我々のグループの関連論文も参考に示させていただきます。

Mitochondrial membrane potential regulates PINK1 import and proteolytic destabilization by PARL.
Jin SM, Lazarou M, Wang C, Kane LA, Narendra DP, Youle RJ.
J Cell Biol. 2010 Nov 29;191(5):933-42.
PMID: 21115803

p62/SQSTM1 is required for Parkin-induced mitochondrial clustering but not mitophagy; VDAC1 is dispensable for both.
Narendra D, Kane LA, Hauser DN, Fearnley IM, Youle RJ.
Autophagy. 2010 Nov 16;6(8):1090-106.
PMID: 20890124

Parkin overexpression selects against a deleterious mtDNA mutation in heteroplasmic cybrid cells.
Suen DF, Narendra DP, Tanaka A, Manfredi G, Youle RJ.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Jun 29;107(26):11835-40. Epub 2010 Jun 14.
PMID: 20547844

PINK1 is selectively stabilized on impaired mitochondria to activate Parkin.
Narendra DP, Jin SM, Tanaka A, Suen DF, Gautier CA, Shen J, Cookson MR, Youle RJ.
PLoS Biol. 2010 Jan 26;8(1):e1000298.
PMID: 20126261