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PubMedID 21364763 Journal PLoS One, 2011;6(2);e17412,
Title Starvation induced cell death in autophagy-defective yeast mutants is caused by mitochondria dysfunction.
Author Suzuki SW, Onodera J, Ohsumi Y
東京工業大学 フロンティア研究機構  大隅良典研    鈴木 翔     2011/03/07

オートファジー不能変異株は飢餓時になぜ死ぬのか?
最近、受理された私たちの論文について紹介させていただきます。

はじめて得られたオートファジー不能変異株が窒素源飢餓で死にやすいという表現型を示したため、この表現型を用い、最初のスクリーニングが行われ、これまでに知られている主要なATG遺伝子がクローニングされました。
しかし、なぜオートファジー不能変異株が窒素源飢餓時に死にやすくなるのかはわかっていませんでした。
これまで飢餓をかける際に用いていた合成飢餓培地を用いると培地のpHが3程度まで低下し、オートファジー不能変異株(atg欠損株)ではほぼすべての細胞が死んでしまいます。
ところが飢餓培地にBufferを加えるとatg欠損株の細胞でも生存を維持できることが分かりました。
Bufferを加えた飢餓培地を用い、調べたところ、野生株では飢餓に応答して呼吸鎖構成因子や活性酸素除去タンパク質が強く発現が上昇されるのに対し、atg欠損株ではこれらのタンパク質の合成能を失っていました。
結果、高度に活性酸素を蓄積し、これが原因となって呼吸機能を失い、最終的にはmtDNAを欠落することを見出しました。
この呼吸機能の維持にはマイトファジーなどの選択的オートファジーよりもバルクなタンパク質分解(非選択的オートファジー)が重要であることが示唆されました。
またmtDNAを欠失した細胞はオートファジーを起こせるかどうかに関わらず、低いpHの飢餓条件下で死にやすいという表現型を示すことを明らかにしました。
これらの結果から非選択的オートファジーを介して活性酸素の蓄積を防止することがミトコンドリアの機能維持に重要であること、こうした飢餓応答が不十分となることが、オートファジー不能変異株が飢餓時に細胞死を引き起こす主要原因であると考えています。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局