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PubMedID 21338355 Journal J Neurochem, 2011 Feb 21; [Epub ahead of print]
Title Calpastatin, an endogenous calpain-inhibitor protein, regulates the cleavage of the Cdk5 activator p35 to p25.
Author Sato K, Minegishi S, ..., Saido TC, Hisanaga SI
首都大学東京理工学研究科生命科学専攻 神経分子機能(久永研)  神経分子機能(久永研)    佐藤 亘     2011/03/28

カルパスタチンはp35の限定分解を介したCdk5の異常活性化を防ぐ
最近、受理された私たちの論文を紹介させていただきます。

神経細胞ではストレス等により細胞内カルシウム濃度が上昇すると、カルパインが活性化され、Cdk5活性化サブユニットのp35がp25へと限定分解されることが知られています。p25はCdk5を異常に活性化し、タウのなどの過剰リン酸化を引き起こして、神経細胞死や神経変性疾患等の原因になると考えられています。

今回、我々はカルパインの阻害タンパクであるカルパスタチンに注目し、カルパスタチンの過剰発現(TG)マウスと欠損(KO)マウス(ともに理研、西道先生らが作製したマウス)の脳抽出液を用いてp35の限定分解に対するカルパスタチンの影響を調べました。その結果、KOマウスの脳では野生型に比べて限定分解が速く、切断産物であるp25の量も多いこと、一方、TGマウスの脳ではp25がほとんど産生されないことを示しました。さらに、マウスの小脳では大脳に比べてカルパスタチン量が多い(約5倍)ことを確認し、小脳と大脳をカルパスタチン量の異なるモデルと考え、in vivo、培養神経細胞、個体レベルでp35の限定分解を調べて、いずれにおいても小脳では大脳に比べてp35の限定分解が起こりにくいことを示しました。以上の結果から、カルパスタチンはp35の限定分解、即ち異常活性化を制御する重要な因子であることがわかりました。本研究から、カルパスタチンのようなカルパインの阻害剤がCdk5の異常活性化に起因する神経細胞死の抑制に効果的である可能性が示唆されました。

また、カルパスタチンの発現量が多い(TGなど)脳を用いて初めて(カルパイン活性が抑制されている条件下で)カルシウム依存的にp35がプロテアソームによって分解されるということもわかりました。カルシウムがどのような仕組みでユビキチン・プロテアソーム系を活性化しているのか、p35の分解機構に少し近づけたような気がします。
   
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局