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PubMedID 21454557 Journal J Biol Chem, 2011 Mar 18; [Epub ahead of print]
Title Parkin mediates proteasome-dependent protein degradation and rupture of the outer mitochondrial membrane.
Author Yoshii SR, Kishi C, Ishihara N, Mizushima N
東京医科歯科大学 細胞生理学分野  水島昇研    岸千絵子、吉井紗織     2011/04/14

ミトコンドリア外膜に及ぼすParkinの新しい機能の発見
 最近発表した私たちの論文を紹介させていただきます。Parkinはパーキンソン病の原因遺伝子として知られているユビキチンリガーゼです。近年、Parkinが不良ミトコンドリアのオートファジーによる分解(マイトファジー)を誘導することが明らかにされ、オートファジーとパーキンソン病との関連が注目されています。今回私たちは、Parkinがマイトファジー以外の新しい機能を有していることを明らかにしました。この論文では、
1)Parkinは脱分極したミトコンドリアの多種類の外膜タンパク質を分解すること
2)その結果、ミトコンドリア外膜が断裂されうること
3) 脱分極したミトコンドリア外膜にプロテアソームが局在化し、このようなミトコンドリア外膜のタンパク質分解と断裂を引き起こしていること
を見いだしました。
 これらの結果から、Parkinはマイトファジーによるミトコンドリア丸ごとの分解だけでなく、プロテアソーム依存的な外膜タンパク質分解によるミトコンドリアの部分的修繕をも担っている可能性が考えられました。

 さて以下余談になりますが、よかったらついでに読んでください。
東京医科歯科大学医学部には、医学科4年生が5ヶ月間基礎研究を体験する 「プロジェクトセメスター」というカリキュラムがあります。2009年10月、プロジェクトセメスターで水島研に飛び込んできた吉井に与えられたテーマは、当時水島研講師の石原(現・久留米大教授)と共にParkin依存的マイトファジーの定量的解析系を確立させるというものでした。ミトコンドリア外膜にGFPを局在化させた(GFP-Omp25)細胞を作り、FACSによりミトコンドリア分解を定量的にモニターできる系を作成しました。もちろんマイトファジーなので、オートファジーに完全に依存すると思っていたのですが、困ったことにオートファジー欠損細胞でもGFP-Omp25は分解されてしまいました。さらに、それがプロテアソーム阻害剤で抑制されるという理解不能な結果と共に吉井の5ヶ月間のプロジェクトセメスター研究は終了となってしまいました。
 しかし、基礎研究に興味のある吉井はその後も水島研に通い続け、この研究を続けることに決めました。転機は、岸がこのParkin依存的マイトファジーを膜構造の保存性の高い状態で電子顕微鏡観察できたことから始まりました。脱共役剤であるCCCPで処理したParkin発現細胞を電子顕微鏡で観察したところ、ボロボロに断裂した外膜のくっついた、内膜だけとなったミトコンドリアが多数観察されたのです!!! そしてその外膜断裂はオートファジーの有無に関わらずみられました。一方で吉井はGFP-Omp25だけではなく多くの内因性外膜タンパク質がオートファジー欠損細胞でも分解されるという結果を得ており、それと歯車があった瞬間でした。そして、この外膜断裂はプロテアソーム阻害剤で完全に抑制されました。当初解らなかった現象が、その後の実験によりつじつまが合ったことは、非常に嬉しいことでした。
 ただ完全に解明された訳ではありません。この論文の突っ込みどころは、このような外膜断裂が生理的な条件化でも起きているかどうかということです。Parkin高発現細胞のCCCP処理という極端に強い作用によって誘導された可能性もあります。また、私たちは外膜タンパク質の分解とマイトファジーは独立に進行しうることを観察しましたが、直前に発表されたYoule研(Tanaka et al. J Cell Biol. 191:1367 (2010))、Chan研(Chan et al. Hum Mol Genet. 20:1726 (2011))の論文では、プロテアソームによる外膜タンパク質分解が効率的なマイトファジーに必要であることを発表しています。プロテアソームとオートファジーの協調的関係については今後さらなる解析が必要だと思います。

この論文はJBCの“Paper of the week”に選ばれました。JBCホームページの“Paper of the week”では、岸と吉井が紹介される予定ですので、興味のある方は是非そちらもチェックして下さい。
   
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