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PubMedID 21498569 Journal Genes Dev, 2011 Apr 15;25(8);795-800,
Title Autophagy-deficient mice develop multiple liver tumors.
Author Takamura A, Komatsu M, ..., Tanaka K, Mizushima N
東京医科歯科大学 細胞生理学分野  水島昇研究室    高村聡人     2011/05/09

オートファジーが腫瘍発生を抑制
最近発表した、私たちの論文を紹介させて頂きます。

オートファジーと腫瘍の関係は、オートファジーの生理機能の一つとして以前から注目されています。今日では、オートファジーが腫瘍に抑制的に機能するとの説が有力ですが、その決定的な証明はなされていません(Beclin-1ヘテロ欠損マウスにおける易発癌性が有名ですが、オートファジーに特異的な因子とは言い難いという欠点があります)。その最大の理由として、多くのオートファジー欠損動物が短命であることが挙げられます。今回、我々は全身Atg5モザイク欠損マウス(全ての臓器で一部の細胞のみがAtg5を欠損するマウス)を作成する事で、オートファジー欠損細胞の運命を長期的に追跡する事に成功しました。このマウスは正常に出生・発育しますが、生後6ヶ月までに肝腫大が出現し、9ヶ月以降には肝に多発する腫瘍が出現します。この肝腫瘍はAtg5欠損細胞に由来するものであり、腫瘍細胞ではp62やUbiquitin陽性の凝集体、酸化ストレス応答やゲノム傷害応答が見られました。また、電顕では異常に膨化したミトコンドリアが観察されました。さらに、東京都臨床医学総合研究所の小松雅明博士らのグループとの共同研究により、類似する肝腫瘍が肝特異的Atg7欠損マウスでも見られる事、p62との同時欠損によって腫瘍のサイズが縮小することも明らかとなりました。
以上の研究結果から、オートファジーが細胞内のミトコンドリアや異常タンパク質をクリアランスすることで細胞の恒常性を維持しており、この作用が細胞の腫瘍化を抑制することが示されました。

最後になりましたが、小松先生をはじめ、共同研究を行って下さった各先生方に感謝申し上げます。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局