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PubMedID 21757540 Journal Mol Biol Cell, 2011 Jul 14; [Epub ahead of print]
Title Phosphorylation of Ser114 on Atg32 mediates mitophagy.
Author Aoki Y, Kanki T, ..., Uchiumi T, Kang D
九州大学病院・検査部(臨床検査医学講座)  マイトファジー研究グループ    青木義政、神吉智丈     2011/07/19

Atg32のSer114のリン酸化がマイトファジーに重要である
 最近受理された我々の論文を紹介します。

 オートファジーを介したミトコンドリアの選択的分解機構であるミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)はミトコンドリアの質的管理に重要な役割を担っていると考えられています。

 2009年に出芽酵母におけるマイトファジーの必須因子であるAtg32が同定されました。マイトファジーが誘導される際、ミトコンドリアの内在性蛋白質Atg32は選択的オートファジーのアダプター蛋白質Atg11と結合し、Atg11がミトコンドリアをオートファゴソーム形成の場であるPASに誘導していきます。Atg11とAtg32の結合はオートファジーの機構がミトコンドリアを積荷として認識する最初のステップであると考えられますが、この結合がどのようにして媒介されるのか全く分かっていませんでした。そこでAtg11とAtg32のinteractionを詳細に解析したところ、Atg11の4番目のコイルドコイルドメインを含むC末領域とAtg32のN末領域が結合することを確認しました。また、Atg32のSer114とSer119がリン酸化されると(特にSer114がリン酸化されると)、Atg32とAtg11が結合し、マイトファジーが誘導されることも明らかにしました。これらの知見は、Atg32をリン酸化するキナーゼの活性化、または、局在によって、細胞がミトコンドリアの量を調節できたり、あるいは、ダメージが蓄積したり老化したミトコンドリアをマイトファジーによって選択的に分解できることを示唆しています。

 さらに高浸透圧ストレスシグナル伝達経路内のキナーゼHog1とその上流のPbs2がAtg32のリン酸化およびマイトファジー誘導に関与することを見つけましたが、in vitroの実験ではHog1によるAtg32の直接的なリン酸化は認められませんでした。これらのことから、Hog1が関与する高浸透圧ストレスシグナル伝達経路は、Atg32を直接リン酸化する未同定のキナーゼのさらに上流のシグナル経路の一部であると考えています。

 こうした研究の過程で、Atg32のN末領域やC末領域の意義についても検討しました。Atg32のN末端約70アミノ酸はAtg32が安定に発現するのに重要でしたが、マイトファジーの活性自体には影響はありませんでした。一方、Atg32はミトコンドリア外膜を1回貫通しており、そのC末はミトコンドリア膜間スペースに出ています。この膜間スペースに出ている約100アミノ酸は、私たちが調べる限りではマイトファジーの活性には全く影響しない領域でした。

 今後は、Atg32のリン酸化を制御するシグナル経路に注目して研究を進めていくつもりです。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局