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PubMedID 22219374 Journal Mol Biol Cell, 2012 Jan 4; [Epub ahead of print]
Title Mammalian Atg2 proteins are essential for autophagosome formation and important for regulation of size and distribution of lipid droplets.
Author Velikkakath AK, Nishimura T, ..., Ishihara N, Mizushima N
東京医科歯科大学 細胞生理学分野  水島研    西村 多喜     2012/01/18

哺乳類Atg2相同分子の同定と機能解析
最近発表しました、私たちのグループの論文を紹介させて頂きます。

酵母を用いた研究から、Atg2はオートファジーに必須な分子であり、Atg18やAtg9と結合することなどが報告されています。しかしながら、Atg2がどのような機能を有しているのか、その詳細な分子機構は明らかになっておりません。今回私たちは、哺乳類のAtg2相同分子である、Atg2AとAtg2Bの同定および機能解析を行い、以下のことを明らかにしました。

1) Atg2A/B発現抑制条件下では、閉じていない不完全なオートファゴソーム膜構造が蓄積すること。
2) Atg2Aはオートファゴソーム膜と脂肪滴近傍の両方に局在しうること。
3) 生物種間で高度に保存されているAtg2AのC末側の部位(1723-1829)が、脂肪滴局在とオートファゴソーム膜局在の両方に必須なドメインであること。
4) Atg2AのC末側の部位(1723-1829)が、オートファゴソーム形成に必要なドメインであること。
5) Atg2A/B発現抑制条件下では、大きな脂肪滴が蓄積し、一部、凝集塊を形成すること。

近年、オートファジーと脂質代謝の関係性が注目を集めています。特に、オートファジーによる脂肪滴分解(リポファジー)はホットなトピックですが、脂肪滴分解全体におけるリポファジーの寄与度は不明です。少なくとも、今回のAtg2A/B RNAiによる脂肪滴のphenotypeに関しては、Atg5 RNAiで観察されなかったため、リポファジーの異常だけでは説明がつかないと考えています。脂肪滴の形成や調節機構の関与も含めて、慎重に議論していく必要があるように思います。
   
   本文引用

1 東京工業大学フロンティア研究機構  大隅良典 研  小林 孝史 ATG2AのERへの局在について 2012/01/23
哺乳動物ATG2の論文ということで興味深く拝見いたしました。
脂肪滴の形態とATG2との関連は、酵母でまだ報告されていませんが
真核細胞を通じて保存される機構であればさらに面白いと思います。

特に気になった点は、
1) ATG2Aはオメガソーム、あるいはER局在を示すか?
もしオメガソーム局在が見られるのであればWIPI依存的か否か?
オメガソーム特異的ではないがER局在が見られるのであれば
ATG2Aの脂肪滴の大きさの調節はERで行われているのか?

2) ATG2のsiRNAにより脂肪滴が大きくなった際に、
脂肪滴に含まれる脂質であるトリグリセリド(TG)などが細胞内トータルで増えるのか?
同じ細胞でATG5のsiRNAを処理した際には脂肪滴の形態も変わらずTGは増減しないのか?
について興味を持ちました。
      
   本文引用
2 東京医科歯科大学  細胞生理学分野  西村 多喜 Re: ATG2AのERへの局在について 2012/01/26
小林さん、貴重なコメントどうもありがとうございます。

1) ATG2Aはオメガソーム、あるいはER局在を示すか?

Atg2AがERに局在する可能性は十分あると考えておりますが、まだ結論付けられるような結果は得られておりません。

オメガソーム局在とWIPI依存性に関してですが、現在解析中です。
MammalではWIPIが4つありますので、解析にはもう少し時間がかかりそうです。

脂肪滴の大きさの調節に関してですが、ER上と脂肪滴膜上でも、どちらでも起こりうると考えております。

2) トリグリセリド(TG)などが細胞内トータルで増えるのか?

本論文では、TG量の測定など、生化学的な解析は行っておりません。
そのため、Atg2 A/B RNAiによるLD phenotypeが、脂質代謝に起因するのか、LD dynamics (LD fusion, mobilization)に起因するのか、結論付けるまでに至っておりません。
その点に関しましては、今後、より詳細な解析を行っていく予定です。

いずれも、あまりきちんとしたお答えになっておらず、申し訳ございません。

私個人的には、Atg2AのC末側の部位(1723-1829)の機能解析が、次の課題だと思っております。この部位がどのようにして膜局在に関与しているのか、詳細に解析することで、 1)の質問に関しましては、もう少しお答えできるようになるのではないかと思います。


      
   本文引用


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