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PubMedID 23435086 Journal Nat Genet, 2013 Apr;45(4);445-9, 449e1,
Title De novo mutations in the autophagy gene WDR45 cause static encephalopathy of childhood with neurodegeneration in adulthood.
Author Saitsu H, Nishimura T, ..., Mizushima N, Matsumoto N
東京大学大学院 医学系研究科 分子生物学分野  水島研    西村 多喜     2013/09/11

オートファジーと神経変性疾患の関係
 半年くらい前のものなので、大変恐縮ですが、SENDA論文を紹介させて頂きます。(この研究は、横浜市立大学学術院医学群・才津浩智准教授、松本直通教授(遺伝学教室)、群馬大学大学院医学系研究科・村松一洋助教(小児科学)を中心とする小児神経専門医グループらとの共同研究です。) 今回私たちは、神経変性疾患SENDAの原因遺伝子としてWDR45 (WDR45遺伝子は、オートファジーに必須の分子である酵母Atg18のヒト相同遺伝子WIPI4タンパク質をコードする) を全エクソーム解析により同定しました。SENDA(static encephalopathy of childhood with neurodegeneration in adulthood)は、脳内に鉄沈着を伴う神経変性症の一つであり、小児期早期からの非進行性の知的障害と、成人期に急速に進行する錐体外路症状(ジストニアやパーキンソン様症状)、認知症を呈する疾患です。患者由来のリンパ芽球を用いた解析では、いずれの患者由来の細胞でもWIPI4タンパク質の発現が著しく減少しており、オートファジー fluxの低下と、LC3陽性Atg9A陽性の異常オートファゴソームの蓄積が観察されました。SENDAは、オートファジー遺伝子の変異によって明らかなオートファジー機能低下を示す初めてのヒト疾患となり、オートファジーの異常と神経変性疾患の関連性を強く裏付けるものと考えられます。
 補足ですが、WDR45遺伝子はX染色体にコードされており、私たちが解析した患者さんたちは全員女性(XX)で遺伝子形はヘテロ接合でした。(ただ、X染色体の不活化により、mRNAレベルでは変異WIPI4 mRNAがdominantに発現していました。)同時期に発表されたSENDA論文(Am. J. Hum. Genet., Vol.91, 1144-1149, 2012)でも、20例中、女性(XX)17例、男性(XY)3例と性差があり、さらに生存している男性(XY)患者では体細胞モザイク変異であったことが確認されていることから、WIPI4が完全にnullな状態では、ヒトは生存できないのではないかと推察されます。今回はリンパ芽球を用いた解析だけなので、今後は神経系でのWIPI4機能解析を行うことが重要な課題であると考えられます。
   
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局