Proteolysis Forum
トップ

PubMedID 24098148 Journal PLoS Genet, 2013;9(10);e1003845,
Title Coordinate regulation of mature dopaminergic axon morphology by macroautophagy and the PTEN signaling pathway.
Author Inoue K, Rispoli J, ..., Klann E, Abeliovich A
コロンビア大学医学部病理学専攻  Asa Abeliovich研究室    井上 敬一     2014/01/03

コロンビア大学医学部Asa Abeliovich研究室の井上敬一と申します。昨秋発表いたしました我々の論文について報告させていただきます。
  本研究では、オートファジーがPTEN/mTOR経路の下流を抑制することにより、ドーパミン神経細胞の軸索末端サイズを制御していることを示しました。

ドーパミン神経(DA)細胞におけるオートファジーの機能を解明するため、DA細胞特異的にAtg7を欠損するマウス(Atg7 cKO)を作製しました。このマウスのDA細胞では、軸索末端の肥大が見られました。
  細胞の大きさは、PTEN/mTOR経路によって制御されていることが知られています。一方、PTEN/mTOR経路はオートファジーに抑制的に働くことから、DA細胞特的にPTENを欠損させると、Atg7 cKOマウスと同様の表現形が現れると期待されました。しかしながらDA特異的Pten欠損マウス(Pten cKO)を作製したところ、軸索末端の肥大化は見られませんでした。
  さらにAtg7/Pten二重欠損マウス(Atg7/Pten cKO)を作成し、その表現形を一重欠損マウスと比較しました。驚いたことにAtg7/Pten cKOマウスでは、Atg7 cKOマウスに比べ、軸索末端の肥大化が増強されていました。

以上の遺伝学的解析から、DA細胞において、オートファジーはPTEN/mTOR経路を抑制することにより、軸索末端のサイズを制御していることが明らかとなりました。具体的な分子メカニズムは不明ですが、現在Atg7欠損脳組織で蓄積するタンパク質の同定ならびにその機能解析をおこなっております。オートファジーの異常は、さまざまな神経疾患、精神疾患との関わりが示唆されていることから、我々の研究はそれらの病因病態理解の一助になるのではないかと考えております。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局