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PubMedID 24075993 Journal Cell Rep, 2013 Oct 17;5(1);224-36,
Title The deubiquitinase USP28 stabilizes LSD1 and confers stem-cell-like traits to breast cancer cells.
Author
東京工業大学生命理工学部  駒田研究室    卯尾 和音     2014/01/24

脱ユビキチン化酵素USP28はLSD1を安定化して乳癌細胞に幹細胞的特性を与える
学部4年の卯尾と申します。ユビキチン結合モチーフUIMを持つ脱ユビキチン化酵素USP25について研究を行っています。
USP25のパラログであるUSP28に関する興味深い論文を紹介させて頂きたいと思います。


LSD1(Lys-specific demethylase 1)はヒストンH3のK4を脱メチル化することで遺伝子発現の制御を行います。
LSD1は多種の腫瘍細胞において発現が上昇しており、発がんと関連性が示唆されていましたが、発現上昇の原因は解明されていませんでした。

筆者らはLSD1がUSP28による脱ユビキチン化によって安定化されていることを見出しました。
乳がん細胞においてUSP28をノックダウンすると、幹細胞としての性質を与える遺伝子Oct4,Sox2の発現が抑えられた一方、分化した乳腺細胞において発現する遺伝子の発現が上昇しました。
また、USP28をノックダウンした乳がん細胞は正常な乳腺細胞に近い形態をとるようになり、これらの細胞をマウスに移植した際に形成される腫瘍はノックダウンしていない細胞と比べて小さなものになりました。

以上のことから、USP28はLSD1を脱ユビキチン化して安定化することで、分化した乳腺細胞で発現する遺伝子の発現をヒストンH3K4の脱メチル化依存的に抑制し、がん幹細胞としての性質を与えていることが示されました。

LSD1阻害剤は副作用毒性を持ち、がん治療に用いるのは難しいとされています。
筆者らは、USP28は乳がんに対する新たなアプローチとなりうるのではないかと述べています。


この論文ではUSP28のUIMについては触れられていませんが、USP28とLSD1の結合にはUSP28のN末端領域が必要という実験がなされていました。
UIMはこの領域に存在しており、結合に関わっている可能性もあり、興味深いところです。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局