PubMedID |
24239290 |
Journal |
Mol Cell, 2013 Dec 26;52(6);783-93, |
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Title |
Autoadaptive ER-associated degradation defines a preemptive unfolded protein response pathway. |
Author |
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東京大学大学院薬学系研究科 蛋白質代謝学教室 藤田太一 2014/02/18
HRD1 complexにおけるHERPの役割
MammalのHRD1 complexの構成要素である膜タンパク質のHERPがHRD1 complexの安定化に関係していることを明らかにした論文です。HRD1 complexはERADにおいて、ERからサイトゾルへの変性タンパク質の逆行輸送に使われるdisloconとして知られています。
HERPはERストレスで強く誘導され、半減期が1時間と短く、 N末にubiquitin-like domeinを持つことは分かっていましたが、HRD1 dislocon でのHERPの機能は不明でした。筆者らは、HERPの半減期の短さが、HRD1 disloconの機能維持に関係しているのではないかと予想しました。そこでまずHERPがUPSによって分解されることを確認し、分解に使われるUPS因子として、E3のRNF5、E2のUbc6e、ユビキチン化ポリペプチドと結合するUFD1を特定しました。今回の実験では、HRD1特異的なERAD基質としてNHKを用いました。NHKの発現量を増やすと、HERPとRNF5との相互作用が弱くなる一方、HERPとHRD1, SEL1Lとの相互作用は強くなりました。このことから、NHKの発現により、E3とHERPが結合しにくくなり、HRD1 complexを形成しやすくなるのではないかと予想されます。また筆者らは、NHKの発現によってHERPの分解が遅れ、その結果転写による発現誘導よりも早いタイミングでHERPの量が増えることを明らかにしました。さらに、スクロースグラジエントによりHRD1 complexを分画した結果、HRD1 complexは基質がないとすぐに解体してしまうことが分かりました。
以上のことから、小胞体ストレスがかかっていないとき、HERPはすぐに分解されてHRD1 complexが不安定になる一方、ストレスがかかるとHERPの分解が抑えられて発現量が増え、HRD1 complexが安定化すると分かりました。
今回の反応は、転写を介さない迅速な活性制御なので、misfoldタンパク質の増減に対してかなり早い段階で働いていると予想されます。ERADの制御にかかわるタンパク質については分かっていないことが多いですが、このような素早い反応は、折りたたみ途中のタンパク質とmisfoldタンパク質を区別する機構の解明につながる可能性も考えられます。