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PubMedID 24598877 Journal Nat Commun, 2014;3396,
Title Quantitative live-cell imaging reveals spatio-temporal dynamics and cytoplasmic assembly of the 26S proteasome.
Author Pack CG, Yukii H, ..., Tanaka K, Saeki Y
公益財団法人東京都医学総合研究所  蛋白質代謝研究室    佐伯 泰     2014/04/24

蛍光相関分光法によるプロテアソームの動態解析
私たちのプロテアソームに関する論文です。

これまでプロテアソーム研究は、酵素学、構造生物学あるいは遺伝学により大きく進展してきましたが、細胞生物学的手法を用いた解析は世界的にも大きく立ち遅れています。これは、通常の細胞生物学的手法では複合体としてのプロテアソーム機能を言及するのが困難であるためと考えられます。実際、完成したプロテアソームが細胞内にどの程度存在するのか?細胞内でプロテアソームがどのような動態をもつのか?などほとんど分かっていませんでした。

そこで、今回私たちは蛍光タンパク質をプロテアソームサブユニットに融合した酵母細胞を作製し、蛍光相関分光法(共焦点光学系を用いて微小空間における蛍光のゆらぎを測定することで、対象分子の濃度や大きさ、形状などを決定する手法)により生きた細胞内でプロテアソームの動態を解析しました。
その結果、プロテアソームの濃度は細胞質で約200 nM、核質で約1 uMであること、構成サブユニットはほぼ全て完成したプロテアソーム中に安定に存在していることがわかりました。興味深いことに、細胞質や核のプロテアソームの約半数は、それぞれみかけ分子量約10 GDaの遅い動態をもち、何らかのオルガネラや転写マシナリーと相互作用していることがわかりました。また、これまでプロテアソームはそのサイズから、分子集合中間体の段階で核移行し、核内で完成するというモデルが提唱されていましたが、インポーティン変異体等を用いた解析より、プロテアソームは細胞質で完成した後に核膜孔を通過し核に局在化することが示唆されました。

この仕事は本当にたくさんの先生方にお世話になりました。この場をかりてお礼申し上げます。また、余談となりますが、サブユニット融合プロテアソームは私が大学院生時代に始めたものです。遅筆にも程がありますね(若い方は決して真似しませんように)。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局