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PubMedID 24838945 Journal J Cell Sci, 2014 May 16; [Epub ahead of print]
Title The Tor and Sin3-Rpd3 complex regulate expression of the mitophagy receptor protein Atg32.
Author Aihara M, Jin X, ..., Kang D, Kanki T
新潟大学・院医  バイオシグナリング研究室    神吉 智丈     2014/06/05

TorとSin3-Rpd3によるAtg32の発現制御
最近受理されました私たちの論文を紹介させていただきます。
 S. cerevisiaeでは、ミトコンドリア外膜タンパク質Atg32が、ミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)によって分解されるための目印の役割を担っています。Atg32にホモログが、哺乳類で見つかればマイトファジー研究が大きく進むと思いますが、今のところ見つかっていません。私たちは、哺乳類に近づくために、何とかしてAtg32のホモログをS. cerevisiae以外の生き物で探そうと、毎日のようにBlast探索を行っている時期がありました。その過程で、偶然にもPichia pastorisにAtg32ホモログが有ることに気が付きました。
 早速、抗体を作成するとともに、京大・農・阪井研究室の協力を得て、Pichiaでの実験を開始しました。S. cerevisiaeに基づいた私たちの理解では、Atg32は、発酵性培地で培養するとほとんど発現しておらず、非発酵性培地で培養すると、ミトコンドリアの増幅に合わせてAtg32も増加し、やっとウエスタンで検出可能になる、即ち、Atg32はミトコンドリア上のタンパク質なので、その発現はミトコンドリアの量の制御と一体となっていると考えていました。しかしながら、Pichiaでは、発酵性培地、非発酵性培地にかかわらず、ミトコンドリア量も変わらず、Atg32もほとんど発現していない、その代わり、飢餓にするとAtg32が急激に発現することがわかりました。ラパマイシンでも結果は同じでしたので、Atg32の発現はTorの下流で制御されていることが判りました。Atg32のプロモーター領域を調べると、ORFの上流300-350bpを除くと飢餓にしなくてもAtg32が発現するようになることから、Torの下流で働く因子がORFの上流に結合してATG32の転写を抑制しているのだろうと考えられました。少し前にDan Klionskyのラボから、ATG8の転写をUme6-Sin3-Rpd3複合体が抑制していると報告されていたので、もしかしたらATG32も同じかもしれないと考えて試してみたところ、予想通り、sin3やrpd3の破壊株でTorの抑制無しにAtg32の発現が見られました。S. cerevisiaeでも、おおよそPichiaと同じ結果を得れています。これらのことから、Atg32の発現は、Torとその下流のUme6-Sin3-Rpd3複合体により抑制されていると考えられます。
 ATG32はオートファジー関連遺伝子なので、Torの下流でその発現が制御されていて当然とも言えるかもしれませんが、私たちの関心は以下の点にあります。ミトコンドリアを分解するためには、Atg32の114番目のセリン残基をリン酸化することが必須で、このリン酸化の重要性はPichiaでも同じでした。Atg32をリン酸化するキナーゼはCK2で、その上流にはMAPキナーゼHog1のシグナル経路が存在すると考えています。ここにはTorは関係していないと考えています。従って、Atg32をリン酸化するためのMAPキナーゼのシグナル経路と、Atg32の発現を制御するTorを含むシグナル経路、の2つの経路でマイトファジーは調整されていると考えて良さそうです。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局