PubMedID |
25046117 |
Journal |
Autophagy, 2014 Jun 30;10(9); [Epub ahead of print] |
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Title |
Reciprocal conversion of Gtr1 and Gtr2 nucleotide-binding states by Npr2-Npr3 inactivates TORC1 and induces autophagy. |
Author |
Kira S, Tabata K, ..., Yoshimori T, Noda T |
大阪大学 歯学研究科 口腔科学フロンティアセンター(野田健司研究室) 吉良新太郎 2014/07/25
TORC1が不活性化してオートファジーを誘導する機構
最近公表された私たちの論文を紹介させて頂きます。
オートファジーの活性は栄養などの環境変化により制御を受けますが、この制御を担う分子としてTORC1キナーゼが知られています。活性化したTORC1はオートファジーを抑制し、TORC1の不活性化によりオートファジーが誘導されます。TORC1キナーゼの活性は、出芽酵母では低分子量Gタンパク質複合体Gtr1-Gtr2(ほ乳類RagA/B-RagC/Dのホモログ)のGTP/GDP型の遷移により制御されると考えられています。
私たちは酵母ゲノムワイド変異体ライブラリーにおける窒素飢餓で誘導されるオートファジー活性を網羅的に測定し、その活性が顕著に抑制されたnpr2及びnpr3欠損株に着目しました。そのほ乳類ホモログNPRL2及びNPRL3をHeLa細胞でノックダウンしても、同様にオートファジーが顕著に減弱しました。npr2欠損株の表現型はGtr1-Gtr2欠損により消失したことから、Npr2、Npr3はGtr1-Gtr2の上流で、TORC1の制御を介してオートファジーを制御することが分かりました。さらにはGTPase活性を失ったGtr1変異体とnpr2欠損株の表現型が相似であることから、Npr2はGtr1のGTP型からGDP型への変換に重要であると考えられました。実際にNpr2-Npr3やそのほ乳類ホモログは複合体としてGtr1やRagA/BのGAP(GTPase Activating Protein)活性を有することも、最近2つのグループからも報告されています(Liron Bar-Peled et al. (2013) Science)(Panchaud et al. (2013) Sci. Signaling)。
また、私たちはGDP型Gtr1を発現させると栄養豊富な条件下でもオートファジーが誘導され、これがGTP型Gtr2に依存したものであることを見いだしました。さらに、Gtr2はGTP型の時TORC1のサブユニットであるKog1(ほ乳類RAPTORのホモログ)に直接結合しました。一方Gtr2内のKog1と結合すると推定される領域に点変異を導入し、Kog1への結合能をほぼ消失させたGtr2の変異体を発現する細胞では、GDP型Gtr1発現によるオートファジー誘導は見られず、Gtr2がKog1に結合することによりTORC1を不活性化していることが分かりました。
以上のことから、i) Npr2-Npr3によるGtr1内GTPの加水分解の促進、ii) GTP型Gtr2のTORC1への結合、という2つの機構によりTORC1が不活性化しオートファジーが誘導されると考えられます。これまで、Gtr1(RagA/B)がTORC1の活性化を担うことは明らかになっていましたが、その結合パートナーであるGtr2の機能は曖昧でした。今回、Gtr2がTORC1を直接不活性化する機能を持つことを示したことは注目に値するかと考えています。