PubMedID |
25049227 |
Journal |
J Biol Chem, 2014 Jul 21; [Epub ahead of print] |
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Title |
Proteasome Dysfunction Activates Autophagy and the Keap1-Nrf2 Pathway. |
Author |
Kageyama S, Sou YS, ..., Tanaka K, Komatsu M |
新潟大学大学院 医歯学総合研究科 分子遺伝学 小松研 蔭山俊 2014/07/30
プロテアソーム障害は選択的オートファジーとKeap1-Nrf2システムを活性化す
私たちが最近発表した論文について紹介させて頂きます。
ユビキチン−プロテアソームは細胞内のタンパク質恒常性に決定的であり、その障害は非機能的で潜在的に毒性を有する変性タンパク質、そしてユビキチン陽性タンパク質凝集体の蓄積を引き起こします。このような異常タンパク質や凝集体はSqstm1/p62などのユビキチン結合能を有するアダプタータンパク質を介した選択的オートファジーによって排除されることが報告されてきました(Bjorkoy et al., 2005; Kirkin et al., 2009)。しかし、アダプタータンパク質の生体内における意義は十分に解析されていませんでした。一方、私たちの研究室では、Sqstm1/p62がユビキチン陽性凝集体に集積し、351番のセリン残基がリン酸化を受けると転写因子Nrf2の分解因子Keap1が不活化され、Nrf2が安定化、一連の生体防御遺伝子の発現が誘導されることを明らかにしてきました。つまり、選択的オートファジーとKeap1-Nrf2経路が連動していることを意味します(Komatsu et al., 2010; Ichimura et al., 2013; Ishimura et al., 2014)。しかし、その連動機構のin vivoにおける意義は不明なままでした。これらの問題点を明らかにするため、J. Mayerらのグループと共同でプロテアソーム機能が減弱したマウスを作成しました。
肝実質細胞特異的にプロテアソーム機能を減弱させたマウスは、ユビキチンおよびSqstm1/p62陽性のタンパク質凝集体形成を伴った肝障害を呈しました。それら凝集体は選択的にオートファジーにより排除されており、プロテアソーム減弱マウス肝細胞においてAtg7を同時欠損させると、肝障害は劇的に増悪しました。対照的に、Sqstm1/p62を欠損させた場合には、凝集体の形成は著しく抑制されるものの、肝障害の悪化は認められませんでした。さらに、プロテアソーム変異マウス肝臓においてSqstm1/p62はS351がリン酸化されており、Nrf2の活性化が確認されました。Nrf2の同時欠損は、肝臓プロテアソーム変異マウスの病態を著しく悪化させたことから、選択的オートファジー発動時のNrf2活性が生体防御に働くことが初めて明らかになりました。私たちのin vivoの結果は、細胞はタンパク質恒常性の破綻に応答した複数の細胞防御機構を発揮できることを意味しています。