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PubMedID 26030876 Journal Nat Struct Mol Biol, 2015 Jun 1; [Epub ahead of print]
Title Structure of the Atg101-Atg13 complex reveals essential roles of Atg101 in autophagy initiation.
Author Suzuki H, Kaizuka T, Mizushima N, Noda NN
微生物化学研究所  分子構造解析部    鈴木浩典     2015/06/10

高等生物のオートファジー始動に必須な因子Atg101の構造と機能
 最近発表しました我々の論文を紹介させていただきます。この論文は東大・水島先生のグループとの共同研究です。

 出芽酵母ではAtg1 複合体(Atg1, Atg13, Atg17, Atg29, Atg31 の 5 つの因子からなる複合体)がオートファジーの始動を担いますが、一方で、ヒトなどの高等な生物においてはULK複合体(ULK1/2 (Atg1の相同分子), Atg13, FIP200 (Atg17の機能類縁体), Atg101からなる4者複合体)が最初のステップとなり、下流のAtg因子群が集積することで、オートファゴソームの形成が始まります。高等な生物には出芽酵母における Atg29 と Atg31 が存在せず、かわりに Atg101という固有の因子が存在しており、両者の間でオートファジーの始動機構が異なることが予想されています。Atg101はAtg13と直接結合してAtg13の安定化に寄与することが報告されていますが(Hosokawa et al., 2009, autophagy)、それ以外の機能については明らかにされていませんでした。

 今回、我々は出芽酵母よりも進化上哺乳類に近い分裂酵母由来のAtg101についてAtg13との複合体として結晶構造解析を行いました。その結果、Atg101はHORMAドメイン構造をとり、Atg13もHORMAドメイン構造をとることでHORMA-HORMAの複合体を形成すること、高等生物のAtg13がなぜAtg101のような安定化因子を必要とするのかについて構造科学的に明らかとなりました。

 また、構造解析からAtg101には通常のHORMAドメインタンパク質にはない特徴的なループ構造が存在していました。この領域には、トリプトファンおよびフェニルアラニンという疎水性のアミノ酸残基が外側に突き出て存在しており(WF fingerと命名)、これらはすべての生物種のAtg101で保存されていました。哺乳類細胞を用いてヒトAtg101の機能解析をしたところ、Atg101がオートファジーに働くためには WF fingerが必須であり、この領域を用いて下流のAtg因子群の集積に重要な役割を果たすことが明らかとなりました。

 WF finger領域は、結晶中でのパッキング(本来複合体を形成しないタンパク質同士が結晶内で複合体を形成しているかのように見える現象)という予期せぬ相互作用から発見され、そこを出発点として機能解析を行うことでAtg101の新たな機能が明らかとなりました。現時点ではまだ、WF fingerに対しての直接の相互作用相手がわかっていませんが、高等生物におけるオートファジー始動機構の全容解明に向けた今後の研究のきっかけになればと思います。
   
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