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PubMedID 26213203 Journal Autophagy, 2015;11(9);1471-83,
Title Expression of a ULK1/2 binding-deficient ATG13 variant can partially restore autophagic activity in ATG13-deficient cells.
Author Hieke N, Loffler AS, ..., Mizushima N, Stork B
東京大学 大学院医学系研究科  分子生物学分野(水島研究室)    貝塚 剛志     2015/12/12

Atg13はULK1/2と結合しなくともオートファジーをある程度駆動できる
 少し前のもので恐縮ですが、もう一報ご紹介いたします。この研究はハインリヒ・ハイネ大学 分子医学研究所のBjörn Stork博士のグループとの共同研究で、中心となって実験を行ったのは当研究室にも3ヵ月ほど滞在していたNora Hiekeさんです。
 オートファジーの駆動において最も初期のステップで機能しているULK複合体はULK1(またはULK2)、Atg13、 FIP200、およびAtg101から構成されています。本研究において、私たちはAtg13のC末端の2残基がULK1/2との結合に必須であること、およびAtg13とULK1/2の結合がオートファジーに部分的に重要である(ただし必須ではない)ことを示しました。
 出芽酵母Atg13のAtg1結合部位は中央付近のMIT-interacting motif (MIM)であることがわかっており、ヒトAtg13のC末端部分もこのMIMに該当するとされています(Fujioka et al. Nat Struct Mol Biol. 2014 21:513-21)。ただし、すでに知られているように酵母Atg13は栄養飢餓依存的にAtg1と結合しますが、ヒトAtg13は恒常的にULK1と結合しています。また、出芽酵母Atg13ではMIMのN末端側(MIM(N))が結合に必須であり、C末端側(MIM(C))はリン酸化を受けることで結合の調節に寄与しているとされていますが、ヒトAtg13においてULK1との結合に必要な残基はMIM(C)の一部分であり、MIM(N)にあたる残基の変異体はULK1とは正常に結合できました。従って、結合様式が進化的に保存されているとは必ずしも言えないかと思われます。
 近年、Stork博士を含む複数の研究グループがULK1/2を欠損した状態でもオートファジーは完全には抑制されないことを報告しています(Alers et al. Autophagy. 2011 7:1423-33. Cheong et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 108:11121-6. McAlpine et al. Autophagy. 2013 9:361-73.)。この知見はAtg13とULK1/2の結合がオートファジーに必須でないという今回のデータと一致していると考えられます。
   
   本文引用



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