PubMedID |
26483381 |
Journal |
J Cell Sci, 2015 Dec 1;128(23);4453-61, |
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Title |
Sqstm1-GFP knock-in mice reveal dynamic actions of Sqstm1 during autophagy and under stress conditions in living cells. |
Author |
Eino A, Kageyama S, ..., Waguri S, Komatsu M |
新潟大学医歯学系 分子遺伝学(生化学1) 蔭山 俊 2015/12/15
p62−ノックインマウスを用いた栄養飢餓、ストレス下のp62の動態解析
最近発表した私たちの論文を紹介させて頂きます。この論文は福島県立医科大学・和栗聡先生のグループとの共同研究です。
Sqstm1/p62(以降はp62と省略)は様々なシグナル伝達経路のハブ分子、そして選択的オートファジーのアダプター分子として機能します。したがって、その機能不全はシグナル伝達経路の異常やタンパク質恒常性の破綻を引き起こし、様々な疾患の要因となることが報告されています。また、p62はオートファゴソームに局在し、オートファジー依存的に分解されることから、オートファジーマーカーとして利用されています。一方、環境ストレスは、p62遺伝子発現やオートファジーによるp62分解を誘導し、p62のタンパク質レベルを顕著に変動させるだけでなく、p62の細胞内局在をも変化させます。これらのp62の特性は、内因性p62分子の細胞内動態や役割を評価することを難しくしていました。
この問題を解決するため、我々はC末端にGFPを融合させたp62−GFPを発現するノックインマウス(p62−GFP KI)を作成しました。このノックインマウスを利用し、生細胞における「内因性p62」の動態を初めて解析し、以下のことを明らかにしました。
1. 栄養飢餓に応じて、p62は主にオートファゴソーム内膜に対応するLC3陽性構造体の限局した領域に局在化した。
2. 飢餓に応じて出現するp62陽性の構造体(オートファゴソーム)のlifespanは、LC3陽性オートファゴソームとほぼ同じ9.49±6.46 minであった。
3. 亜砒酸処理(環境ストレス)はp62−GFPの遺伝子発現を誘導した。その結果、p62−GFPタンパク質は細胞内に著しく蓄積し、亜砒酸処理後6時間でp62−GFPおよびLC3陽性の凝集体形成が出現し、その数、大きさは時間依存的に増加した(直径2-5 um程度の凝集体となる)。Atg7欠損バックグラウンドでは、亜砒酸処理後2時間で凝集体が出現した。
4. 亜砒酸を除去すると、巨大な構造体は小さな凝集体に分裂し、カップ状構造となり、消失した。免疫電子顕微鏡観察から、少なくとも一部のp62−GFP陽性凝集体は隔離膜上に局在した。Atg7欠損バックグラウンドでは、凝集体の分断化、消失は起こらなかった。
5. p62−GFP KIマウス肝臓においてオートファジーを抑制すると、p62−GFP KIマウスは肝臓においてp62−GFPを蓄積し、凝集体の形成を伴った肝障害を引き起こした。
これらの結果は、p62−GFP KIマウスが生細胞、個体におけるp62研究(p62が関与するがん代謝)やオートファジー研究(どのようにしてp62がオートファゴソーム形成部位に集積するか?など)の強力なツールになることを意味すると考えています。