PubMedID | 26609069 | Journal | Mol Biol Cell, 2015 Nov 25; [Epub ahead of print] | |
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Title | Dynamic relocation of the TORC1-Gtr1/2-Ego1/2/3 complex is regulated by Gtr1 and Gtr2. | |||
Author | Kira S, Kumano Y, ..., Matsuura A, Noda T |
最近受理された私たちの論文を紹介致します。
オートファジーの制御に中心的な役割を担うTORC1複合体のキナーゼ活性制御に、出芽酵母では低分子量Gタンパク質2量体Gtr1-Gtr2が、また哺乳類ではそのホモログRagA/B-RagC/Dが関与します。GtrやRagを液胞/リソソームへ係留する足場タンパク質複合体として、酵母Egoと哺乳類Ragulatorが知られています。Ego複合体のサブユニット数(2つ)がRagulatorより少ないため(5つ)、未知のサブユニットがあるのではないかと考えられていました。HHpredサーチによると、Ragulatorサブユニットと相同的な立体構造を示す出芽酵母の機能未知タンパク質が2つヒットしました。解析の結果、これらのうち1つがEgo複合体と液胞膜上で共局在し、Ego1と相互作用が見られるなどしたため、Ego複合体の新規サブユニットEgo2として報告することができました。この点について別のグループからも報告がされました(Powis et al., Cell Research 2015)。
さて上記のことに加えて、本論文ではEgo、GtrおよびTORC1の局在がGtr1-Gtr2により制御されることを示しました。TORC1の局在は液胞膜上に加えて、液胞に付随する輝点として観察されます。Gtr1をGTP型に固定するとTORC1は活性化しますが、この時、Ego複合体及びTORC1は輝点局在する細胞が減少し、膜局在が優勢になりました。一方Gtr1をGDP型に固定するとTORC1活性は抑制され、TORC1(及びEgo複合体)は液胞膜局在する細胞が減少し輝点局在が優勢になりました。すなわちTORC1及びEgo複合体の局在はGtr1のGTP/GDP スイッチングによって制御されると考えられます。我々は昨年Gtr2がTORC1に直接結合することでその活性を抑制することを報告しています(Kira et al., Autohagy, 2014)。そこでGtr2が輝点局在に関与する可能性を検討するため、GFP結合タンパク質(GBP)を液胞膜に局在させることで、輝点に局在するGFP-Tor1を液胞膜全体に人工的に引き出す実験を行いました。その結果、TORC1に結合することができないGTR2の変異株ではGFP-Tor1を液胞膜に引き出せましたが、Gtr2がGTP型で存在する細胞ではその効率が著しく落ちていました。つまり、Gtr1がGDP型の時、Gtr2がGTP型をとることでTORC1の輝点への局在化に積極的に関与していると考えられます。
この局在化機構の生理的意義として、TORC1の基質のいくつかはこの輝点とは異なる液胞膜上に濃縮されることから、TORC1と基質の接近性がTORC1の活性調節と連動する可能性を提案しています。
1 | 大阪大学大学院歯学研究科口腔科学フロンティアセンター 先端口腔生物学教室(野田健司研究室) 吉良新太郎 | TORC1の局在変化と活性調節の相関 | 2015/12/16 |
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オートファジーの制御に中心的な役割を担うTORC1複合体のキナーゼ活性制御に、出芽酵母では低分子量Gタンパク質2量体Gtr1-Gtr2が、また哺乳類ではそのホモログRagA/B-RagC/Dが関与します。GtrやRagを液胞/リソソームへ係留する足場タンパク質複合体として、酵母Egoと哺乳類Ragulatorが知られています。Ego複合体のサブユニット数(2つ)がRagulatorより少ないため(5つ)、未知のサブユニットがあるのではないかと考えられていました。HHpredサーチによると、Ragulatorサブユニットと相同的な立体構造を示す出芽酵母の機能未知タンパク質が2つヒットしました。解析の結果、これらのうち1つがEgo複合体と液胞膜上で共局在し、Ego1と相互作用が見られるなどしたため、Ego複合体の新規サブユニットEgo2として報告することができました。この点について別のグループからも報告がされました(Powis et al., Cell Research 2015)。 さて上記のことに加えて、本論文ではEgo、GtrおよびTORC1の局在がGtr1-Gtr2により制御されることを示しました。TORC1の局在は液胞膜上に加えて、液胞に付随する輝点として観察されます。Gtr1をGTP型に固定するとTORC1は活性化しますが、この時、Ego複合体及びTORC1は輝点局在する細胞が減少し、膜局在が優勢になりました。一方Gtr1をGDP型に固定するとTORC1活性は抑制され、TORC1(及びEgo複合体)は液胞膜局在する細胞が減少し輝点局在が優勢になりました。すなわちTORC1及びEgo複合体の局在はGtr1のGTP/GDP スイッチングによって制御されると考えられます。我々は昨年Gtr2がTORC1に直接結合することでその活性を抑制することを報告しています(Kira et al., Autohagy, 2014)。そこでGtr2が輝点局在に関与する可能性を検討するため、GFP結合タンパク質(GBP)を液胞膜に局在させることで、輝点に局在するGFP-Tor1を液胞膜全体に人工的に引き出す実験を行いました。その結果、TORC1に結合することができないGTR2の変異株ではGFP-Tor1を液胞膜に引き出せましたが、Gtr2がGTP型で存在する細胞ではその効率が著しく落ちていました。つまり、Gtr1がGDP型の時、Gtr2がGTP型をとることでTORC1の輝点への局在化に積極的に関与していると考えられます。 この局在化機構の生理的意義として、TORC1の基質のいくつかはこの輝点とは異なる液胞膜上に濃縮されることから、TORC1と基質の接近性がTORC1の活性調節と連動する可能性を提案しています。 |
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