PubMedID |
25619926 |
Journal |
Dev Cell, 2015 Feb 9;32(3);304-17, |
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Title |
A role for the ancient SNARE syntaxin 17 in regulating mitochondrial division. |
Author |
Arasaki K, Shimizu H, ..., Simmen T, Tagaya M |
東京薬科大学・生命科学部 分子細胞生物学研究室 新崎恒平 2015/12/16
栄養状態におけるsyntaxin17の役割
投稿が遅くなってしまいましたが、私達が見いだしましたsyntaxin 17の栄養状態における役割に関する論文を紹介致します。
Syntaxin 17(Stx17)は2000年にRichard Scheller博士らにより小胞体に局在するSNAREタンパク質として同定されましたが(Steegmaier et al., MBoC 2000)、水島先生の研究室よりオートファゴソームとリソソームの融合に関わるSNARE分子として報告されました(Itakura et al., Cell 2012)。その後、吉森先生の研究室よりStx17はPI3K複合体を小胞体―ミトコンドリアの接触部位であるMAMにリクルートすることによりオートファゴソーム形成にも働いていることが見いだされました(Hamasaki et al., Nature 2013)。
我々は栄養状態におけるStx17の機能解析を中心に研究を行い、Stx17が小胞体・MAM・ミトコンドリアに局在すること、Drp1(ミトコンドリアの分裂因子)の機能を制御することでミトコンドリアの分裂に働いていることを見いだしました。更に、Stx17とDrp1の相互作用はMAM上であることも明らかにしています。コロラド大学のVoeltz博士らのグループはミトコンドリアの分裂には小胞体とミトコンドリアの接触場が重要であるというモデルを提唱していますが(Friedman et al., Science 2011)、Stx17がMAM上においてDrp1の機能を制御しミトコンドリアの分裂に関与するという知見は本モデルに合致すると考えています。
次に、栄養状態から飢餓状態に移行した際にStx17の機能にどのような変化が生じるかに着目致しました。飢餓状態になると、ミトコンドリアは 伸長することでオートファゴソームから逃れていることが報告されています(Rambold et al., PNAS 2010)。そこで、飢餓誘導下におけるStx17とDrp1の相互作用を確認したところ、飢餓誘導により両者の相互作用が有意に低下していることを見いだしました。更に、栄養状態と比較してStx17とPI3K複合体の因子であるAtg14Lとの相互作用が有意に上昇していることも明らかにしました。このことは、栄養状態においてStx17はDrp1と相互作用することによりミトコンドリアの分裂制御に機能しますが、飢餓状態になるとDrp1と解離することでミトコンドリアの伸長を引き起こし、Atg14との相互作用を介してオートファジーの進行に働くことを示しています。
上記の内容より、我々はStx17が栄養状態と飢餓状態で結合パートナーを変換することにより機能を発揮する分子スイッチとして働いている可能性を提案致します。