PubMedID |
27046251 |
Journal |
Autophagy, 2016 Mar 3;12(3);565-78, |
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Title |
Lysosomal putative RNA transporter SIDT2 mediates direct uptake of RNA by lysosomes. |
Author |
Aizawa S, Fujiwara Y, ..., Wada K, Kabuta T |
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第四部 第一研究室 株田智弘 2016/04/08
リソソームによるRNA取り込みを仲介するSIDT2
私達は、リソソームがATP依存的に直接RNA・DNAを取り込み分解するシステムRNautophagy・DNautophagyを見いだし、研究を進めています。これまで、リソソームによる核酸の取り込みのメカニズムについてはほとんどわかっていませんでした。そこで本研究ではリソソーム膜上の核酸トランスポーターの同定を目的とした研究を進めました。
Gene ontologyデータベースを用いた検索結果によると、SID-1ファミリー蛋白質 (SID-1, SIDT1, SIDT2)がRNAトランスポーターとして機能する、または機能し得る唯一のグループでした。SID-1はC. elegansの細胞膜に存在する複数回膜貫通蛋白質であり、細胞膜における双方向RNAトランスポーターとして働くことが報告されています。哺乳類は、SID-1のorthologとしてSIDT1とSIDT2の2種類の分子をもっています。SIDT2は主にリソソームに局在するという報告が複数あるので、本研究ではまずSIDT2のリソソーム局在を検討し、確認しました。また、SIDT2を過剰発現またはノックダウンさせた細胞由来リソソームにおいて、RNautophagy活性がそれぞれ増強、減弱することを、単離リソソームを用いたアッセイ系を用いて示しました。SIDT2の発現量の変動はリソソームpHやリソソーム内の分解酵素活性に影響を与えなかったという結果もあわせ、SIDT2がリソソームによるRNA取り込みを仲介することを明らかにしました。反対に、SIDT1はリソソームには局在せず、その過剰発現はRNautophagy活性に影響しませんでした。
細胞レベルでは、MEFにおいて、24時間内で分解される総RNAのうち約50%の分解がSIDT2のノックダウンにより阻害されました。クロロキン存在下ではSIDT2ノックダウンによるRNA分解抑制効果が有意には見られないこと、SIDT2のノックダウンはmacroautophagic fluxに影響しないこと、またatg5 KO MEFでも同様の結果が得られたことから、SIDT2を介したRNautophagyは細胞内の恒常的RNA分解において主要な経路の1つであることが強く示唆されました。
SIDT2はリソソーム膜上でRNAトランスポーターとして働いている可能性が高いと考えられますが、トランスポーター活性を示すには今後の研究が必要です。また、以前RNautophagyにおける核酸受容体として機能すると報告したLAMP2Cと、今回報告したSIDT2との関連性に関しても今後の課題です。まだ課題も多いですが、個人的には今回の研究結果は非小胞輸送型オートファジー研究の今後の進展に繋がる重要な発見であると考えております。