PubMedID |
27404361 |
Journal |
Dev Cell, 2016 Jul 11;38(1);86-99, |
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Title |
The Intrinsically Disordered Protein Atg13 Mediates Supramolecular Assembly of Autophagy Initiation Complexes. |
Author |
Yamamoto H, Fujioka Y, ..., Noda NN, Ohsumi Y |
東京大学 医学系研究科 分子生物学分野 水島研究室 山本 林 2016/07/25
天然変性タンパク質Atg13によるオートファジー始動複合体の高次集積機構
私たちが最近発表した論文について紹介させて頂きます。この論文は東京工業大学・大隅研究室で行われた研究で、微生物化学研究所・野田研究室、金沢大学・安藤研究室、横浜市立大学・平野研究室との共同研究になります。
出芽酵母ではオートファジーの誘導に伴って複数のAtgタンパク質が液胞近傍に集積し、オートファゴソーム形成の足場となるPAS (pre-autophagosomal structure) を形成します。PAS形成の最初のステップではAtg1、Atg13およびAtg17-Atg29-Atg31サブ複合体(二量体)からなるオートファジー始動複合体(Atg1複合体)が形成されます。我々は以前の論文で、脱リン酸化されたAtg13がAtg1およびAtg17-Atg29-Atg31サブ複合体と相互作用することでAtg1複合体の最小ユニット(2:2:2:2:2のstoichiometry)を形成することを報告しました(Fujioka et al., Nat. Struct. Mol. Biol.,2014)。しかし、蛍光強度の定量結果からPASにはそれぞれ28-56分子程度のAtgタンパク質が集積していることが分かっており、これはAtg1複合体の最小ユニットが少なくとも十数個集まっていることを示しています。今回の論文ではAtg13が2つのAtg17結合部位を介してAtg17-Atg29-Atg31サブ複合体同士を繋ぎ止めることでAtg1複合体の高次集積を担っていることを明らかにしました。
以前の論文でAtg13の1つ目のAtg17結合部位(17BR: Atg17-binding region)を同定していましたが、今回の論文ではAtg13が17BRとは別の領域でAtg17と相互作用することを見出し、その機能から17LR(Atg17-linking region)と名付けました。17LRと17BRはともにAtg13の天然変性領域にあたり、少しだけ離れたところに位置しています(「少しだけ離れた」というのが重要なポイントになります)。一方、17LRおよび17BRのペプチド断片を含むAtg17-Atg29-Atg31サブ複合体の結晶構造解析から、17LR結合部位と17BR結合部位が約130オングストローム離れていることが明らかとなり、Atg13の一次配列上における17LRと17BRの距離が(天然変性領域で紐状に伸びていたとしても)、結晶構造上の17LR結合部位と17BR結合部位の距離に満たないことが分かりました。これはAtg13が2つのAtg17結合部位(17LRと17BR)を介して単一のAtg17-Atg29-Atg31サブ複合体と相互作用するのが難しいことを示しており、Atg13が異なる2つのAtg17-Atg29-Atg31サブ複合体間(inter-molecular)で相互作用する可能性が示唆されました。そこでリコンビナントタンパク質を用いてin vitro複合体形成解析を行ったところ、Atg13がAtg17-Atg29-Atg31サブ複合体同士を繋ぎ止めることでAtg1複合体を自己集積させる機能があることが分かりました。また、Atg13が仲介するAtg1複合体の自己高次集積はPASの基盤形成に必須であり、特にAtg1の自己リン酸化、Atg9ベシクルのPASへのリクルート、Atg1によるAtg9のリン酸化など、PAS形成初期過程における重要ステップに深く関与していることが示されました。これはAtg1複合体の自己高次集積により個々のAtgタンパク質が近接し、局所的に濃度が上がることで、分子間でのリン酸化など各種反応が亢進するためではないかと考えています。