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PubMedID 27885029 Journal Science, 2016 Nov 25;354(6315);1036-1041,
Title The ATG conjugation systems are important for degradation of the inner autophagosomal membrane.
Author Tsuboyama K, Koyama-Honda I, ..., Morishita H, Mizushima N
東京大学大学院医学系研究科分子生物学分野  水島研究室    小山-本田郁子     2016/12/01

ATG結合系はオートファゴソーム内膜の分解に重要である
先日出版されました私たちの論文について紹介させて頂きます。
哺乳類細胞におけるオートファゴソームの完成、リソソーム融合といったオートファゴソーム成熟過程についての分子機構は、未解明な部分が多くあります。
私達は、オートファゴソームの成熟過程について主に蛍光生細胞観察による詳細な解析を行ないました。GFP-Syntaxin17 (STX17) をオートファゴソームマーカー、 LysoTracker を酸性リソソームマーカーとして利用し、オートファゴソームの酸性化過程を丁寧に観察したところ、まずオートファゴソームの内膜と外膜間の領域のみが酸性化された状態が約7分続き、その後にオートファゴソーム内部全体の酸性化が見られました。すなわち、リソソームの融合後、時間差をおいてオートファゴソームの内膜が分解されることが初めて観察されました。
次に、これまでオートファゴソーム形成が完成しないためにオートファジー不全であると考えられてきたATG 結合系(ATG5やATG3など)のKO細胞で同様の観察を行いました。すると、STX17 陽性オートファゴソーム様構造の形成とそれらとリソソームの融合が観察されました。しかし、オートファゴソームの完成率が野生型細胞の 30% 程度であること、また、オートファゴソーム内膜の分解が野生型細胞より 6 倍以上遅れがあることがわかりました。さらに、オートファゴソーム形態の解析から、ATG結合系はオートファゴソームの閉鎖に必要であることが示唆されました。
私たちは、膜の閉鎖による外膜と内膜の切り離しがオートファゴソームの完成や内膜の分解を促進するのではと考えています。このような切り離された膜がリソソーム酵素感受性になるしくみは、マルチベシキュラーボディー形成やミクロオートファジーの機構にも共通である可能性があります。

以下、研究のエピソードを記します。
この研究は、東大医学部MD研究者育成プログラム履修生だった坪山幸太郎君(今年度より東大新領域泊研の博士課程)が、オートファゴソームとリソソームの融合の瞬間をとらえるべく様々なマーカーを検討していたことと、ATG 結合系KO細胞で見られる隔離膜の形態や運命を追跡していた私の研究が、図らずも融合した結果です。ATG 結合系の部分が飛躍したきっかけは、2年前の新学術領域会議の夜中の意見討論会で異様な(?)盛り上がりで発足した「Atg8(LC3)が無くても勢いで隔離膜が閉じるか」検討委員会(命名は神吉先生。メンバーは小松先生、神吉先生、阪井先生、和栗先生、水島先生)より、STX17を見てはというアイディアをいただいたことでした。2週間後にはATG3KO細胞でSTX17陽性構造を確認でき、かつLysotracker陽性で寿命が長いことにもすぐ気づき、ちょうどその直前に坪山君と共に野生型細胞で見出していた「LysoTracker リングパターン=リソソームは融合したが内膜が分解されていない状態」と結びついたところまで、感動的な勢いでした。お酒の席でサイエンスが飛躍することを実体験させていただきました。委員会の先生方に感謝申し上げます。

結局、新しい発見よりも多くのクエスチョンを生み出した論文になりました。ATG 結合系の真の機能、隔離膜の分離機構や内膜・外膜の性質の違い、内膜を分解する酵素、STX17のリクルート機構などなど、解き甲斐のある問題が山積しております。
   
   本文引用



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