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PubMedID 27846364 Journal Autophagy, 2016 Nov 15; [Epub ahead of print]
Title HSF1 stress response pathway regulates autophagy receptor SQSTM1/p62-associated proteostasis.
Author Watanabe Y, Tsujimura A, Taguchi K, Tanaka M
京都府立医科大学大学院 医学研究科  基礎老化学    渡邊義久     2016/12/07

HSF1ストレス応答パスウェイはp62を介したプロテオスタシス機能を制御する
 最近発表しました我々の論文を紹介させていただきます(昨年のオートファジー研究会でポスター発表しておりますが、、、)。

 SQSTM1/p62は細胞内に蓄積した異常タンパク質の封入体形成やマクロオートファジーによる選択的分解に関与し、異常タンパク質の毒性から細胞を保護していると考えられています。p62内のS349(KEAP1結合領域)やS403, S407(Ub結合領域)のリン酸化は基質(Keap1やUb化タンパク質等)との結合に関与しており、酸化ストレス、ミトコンドリア障害や異常タンパク質の蓄積に伴いリン酸化の亢進が起きることが報告されています。しかし、異常タンパク質の蓄積からp62リン酸化の誘導へ至る詳細なパスウェイは不明でした。
 HSF1(熱ショック因子1)はストレス応答のマスター制御因子で分子シャペロンを含むHSPの転写因子です。HSF1ストレス応答パスウェイは異常なタンパク質の蓄積を感知して活性化されます。我々はこのパスウェイがp62のリン酸化調節に関与しているのでは?と考え、HSF1阻害やノックアウト細胞を用いp62のリン酸化を検証しました。その結果、プロテアソーム阻害剤MG132処理下でもS349およびS403のリン酸化は抑制されました。そして、蓄積したUb化タンパク質の封入体形成も抑制されました。次に、異常タンパク質のオートファジーによるクリアランスへの影響を調べました。その結果、HSF1を阻害したとき、有意に異常タンパク質のクリアランスの遅延が起きました(阻害剤はUPSに影響しないことも確かめております)。以上の結果から、HSF1ストレス応答パスウェイを介してp62のプロテオスタシス機能は調節されていると考えられる。
 本論文では、HSF1がp62のリン酸化酵素であるmTORC1、CK1やTBK1をどのように活性化させるのかは全く明らかにできていません。今後、HSF1の下流パスウェイを明らかにする必要があり、現在研究途中であります。
   
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局