PubMedID |
28590904 |
Journal |
Elife, 2017 Jun 07; |
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Title |
Niemann-Pick type C proteins promote microautophagy by expanding raft-like membrane domains in the yeast vacuole. |
Author |
Tsuji T, Fujimoto M, ..., Takatori S, Fujimoto T |
名大・院医・分子細胞学分野 藤本研究室 辻琢磨 2017/06/08
ニーマンピック病C型蛋白質によるラフト膜拡張がミクロオートファジーを促進する
先日出版されました私たちの論文を紹介させていただきます。
本研究では、私たちが従来から主軸としていた急速凍結・凍結割断レプリカ標識法に加えてディープエッチ電顕法を応用し、出芽酵母のリポファジーについて解析を行いました。これらの電顕法を用いた形態学的な解析から、静止期や窒素飢餓時の出芽酵母では、液胞膜にステロールの豊富な領域、すなわちラフト様の膜ドメインが形成され、この膜ドメインが脂肪滴を直接包み込みながら陥入し、ミクロオートファジーを起こすことが明らかになりました。またこの時、ラフト様ドメインの周辺には非ラフト様ドメインがあり、ミクロオートファジー小胞はこの非ラフト様ドメインの部分で液胞膜から切り離されることがわかりました。
正常の液胞膜のステロール含量は非常に低いため、ラフト様ドメインの形成にはステロールの供給が必要です。我々はこの過程にニーマンピック病C型遺伝子 (NPC) の出芽酵母オルソログであるNcr1/Npc2(特にNpc2)が関わることを見出しました。すなわちNcr1/Npc2を欠損した酵母ではラフト様ドメインの形成、液胞内への脂肪滴の取り込み・分解のいずれもが減少し、一方、液胞内腔にはステロールの蓄積が見られました。これらの結果から、Ncr1/Npc2欠損細胞では液胞内腔から液胞膜へのステロール輸送が起こらないために、ラフト様ドメインの拡張が阻害され、ミクロオートファジーが抑制されたと考えられます。なお窒素飢餓時には急激なMVB経路の活性化が起こることが知られていますが、その結果として液胞に運び込まれたMVBの内部小胞が、Ncr1/Npc2によって輸送されるステロールの供給源であることも明らかになりました。
ミクロオートファジーの分子機構には不明な点が多く残されていますが、今回の結果はミクロオートファジーの場としてラフト様膜ドメインの形成が重要であることを示しました。またヒトのニーマンピック病C型では、NPC遺伝子の変異が脂質代謝異常を引き起こし、それが中枢神経障害などを引き起こすと推測されていますが、脂質代謝異常と中枢神経障害をつなぐメカニズムは十分に理解されていません。今回の結果がニーマンピック病C型の病態解明や治療法開発の新たな糸口になることを期待しています。