PubMedID |
28683091 |
Journal |
PLoS Pathog, 2017 Jul;13(7);e1006444, |
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Title |
Endothelial cells are intrinsically defective in xenophagy of Streptococcus pyogenes. |
Author |
Lu SL, Kawabata T, ..., Lin YS, Yoshimori T |
大阪大学大学院 医学系研究科 遺伝学教室 吉森研究室 川端剛 2017/07/07
血管内皮細胞はゼノファジーを起こせない
最近掲載された我々の論文を紹介させてください。今回我々は血液と直接接する細胞である血管内皮細胞に焦点を絞ってゼノファジーを解析しました。
複数の血管内皮細胞および上皮細胞にA群レンサ球菌(GAS; Group A Streptococcus pyogenes)を感染させると、上皮細胞ではGASの増殖が抑えられるのに対し、血管内皮細胞では増殖が止まらず細胞死が引き起こされる事が分かりました。血管内皮細胞でも飢餓誘導オートファジーは正常に起きていましたが、二重膜に包まれたGASが観察されておらず、血管内皮細胞はGASに対するゼノファジーが起こせないと考えられました。SalmonellaやS. aureusについても血管内皮細胞内での増殖がみられ、これはGASに限った現象ではなくゼノファジーのシステムの異常と考えられました。血管内皮細胞ではGASのユビキチン化が有意に低下しており、また感染前にユビキチン標識したGASを感染させると血管内皮細胞でもGASの増殖は抑えられると共に二重膜形成が見られたため、低いユビキチン標識能が血管内皮細胞でゼノファジーが起きない原因と考えられました。さらに、血管内皮細胞では細菌のユビキチン化に必要な一酸化窒素シグナル経路が上皮細胞ほど誘導されていませんでした。一酸化窒素シグナル経路は循環器系の恒常性に関わるため、我々の体内ではゼノファジーよりもそちらが優先されていると推測されます。
血管内に細菌が侵入した状態(菌血症)では血管内皮細胞でゼノファジーが起こせないことは、感染症の重篤化の原因になりうるでしょう。血管内皮細胞でゼノファジーを人為的に起こす方法を開発できれば、重篤な感染症を軽減する方策につながると予想しています。
本研究はPLOS Pathogensのweek's Featured Research Articleとして注目されています。阪大のプレスリリースや、共同通信などの報道機関からも取り上げられていますので、原著論文と合わせて参照頂ければ幸いです。