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PubMedID 28838958 Journal J Cell Biol, 2017 Aug 24; [Epub ahead of print]
Title Evidence for ESCRT- and clathrin-dependent microautophagy.
Author Oku M, Maeda Y, ..., Fujimoto T, Sakai Y
京都大学大学院農学研究科  制御発酵学分野    奥 公秀     2017/08/28

ミクロオートファジーの分子機構:知れば知るほどややこしい 
 このたび発表いたしました私たちの研究結果をご紹介します。
 リソソーム・液胞膜が変形して細胞質成分を直接取り込むミクロオートファジーは、マクロオートファジーと同様に様々なオルガネラを分解します。ミクロオートファジーでは、液胞膜が分解物を取り囲んだ後、ミクロオートファジックボディを形成し、液胞膜タンパク質も同時に分解されることになります。今回、私たちは出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae を用いて、複数の液胞膜タンパク質(Pho8とVph1)と蛍光タンパク質との融合タンパク質をミクロオートファジーのマーカータンパク質として用いて追跡することで、1)ミクロオートファジーが生育炭素源の変換(ダイオーキシックシフト)後に誘導されること、2)このミクロオートファジーはオートファゴソーム形成に寄与するAtgタンパク質を必要とせず、ESCRTタンパク質に依存することを見いだしました。(調べたAtg分子の中で必要なのはAtg15のみ)。さらに3) 名古屋大学 藤本豊士先生との共同研究による電顕観察と、小胞体には局在しない新しい脂質滴マーカータンパク質として同定したOsw5-EGFPの分解から、ミクロオートファジーが脂肪滴分解、ミクロリポファジーに寄与することも見いだしました。
 ESCRTタンパク質の一つVps27(哺乳類Hrsタンパク質のオーソログ)はクラスリン重鎖サブユニットと相互作用しますが、今回のミクロリポファジーにおいてもクラスリンおよびVps27とクラスリンの相互作用が必要であることが分かりました。ESCRTは通常エンドソームで機能しますが、ミクロオートファジー誘導時には液胞膜上にリクルートされていました。ESCRTタンパク質による細胞質成分の取り込みは、哺乳類細胞および分裂酵母ではエンドソームの膜陥入により行われることが報告されています。このように、生物種ごとにバリエーションはありますが、Atgタンパク質を全く用いないミクロオートファジーも進化的に保存された重要な機構であるようです(そう思いたいです)。
 ごく最近、S. cerevisiaeが栄養源饑餓状態になったかなり長時間の培養後で(おそらくマクロオートファジーが起こった後で)起こるミクロリポファジーに関する論文では、Lippincott-SchwartzのグループによってはAtg15、藤本先生らによってはAtg8とそのconjugationに必要なAtg分子が必要なことが報告されています。私たちも以前、酵母Pichia pastoris では、ミクロペキソファジーには多くのAtg分子が、micropexophagic membrane apparatus (MIPA)の形成を通して必要であることを示してきた手前、今回のミクロオートファジーがAtg分子に全く依存しないという結果を見て、ミクロオートファジーの分子機構の多様さにぼう然としています。現在、ミクロオートファジーの分子機構の多様性を俯瞰し整理する必要があると考えています。
   
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局