PubMedID |
30254161 |
Journal |
Proc Natl Acad Sci U S A, 2018 Oct 09;115(41);10363-10368, |
|
Title |
The Atg2-Atg18 complex tethers pre-autophagosomal membranes to the endoplasmic reticulum for autophagosome formation. |
Author |
Kotani T, Kirisako H, ..., Ohsumi Y, Nakatogawa H |
東京工業大学 生命理工学院 中戸川研究室 小谷 哲也 2018/10/11
Atg2-Atg18複合体がPASを小胞体につなぎとめる?
先日受理されました私たちの論文を紹介させていただきます。
Atg2はオートファゴソーム形成に必須ですが、その機能は明らかとなっていませんでした。出芽酵母においてAtg2はAtg18と複合体を形成して、オートファゴソーム形成に必須のAtgタンパク質の中で最後にpre-autophagosomal structure (PAS)に局在化します。そのため、隔離膜の伸張反応を理解するためにはAtg2の機能を明らかにすることが鍵となると考えられます。
本研究では出芽酵母を用いて、Atg2のN末端領域とC末端領域内にオートファゴソーム形成に重要な領域があることを明らかにしました。酵母から精製したタンパク質とリポソームを用いたin vitroの実験により、どちらの領域も膜へ結合する機能があり、この2つの領域を介してAtg2が2つの膜構造体を繋ぎ留めることを示しました。またAtg2のC末端領域にある両親媒性へリックスがAtg18のPI3Pを含むリポソームへの結合に必要であり、Atg2-Atg18複合体のPASへの局在化に必要であることを明らかにしました。一方、Atg2のN末端領域はAtg2-Atg18複合体のPASへの局在化には必要なく、小胞体との結合に関与する可能性を示す結果を得ました。これらの結果を受け、Atg2-Atg18複合体は隔離膜前駆体と小胞体を繋ぎ留めて、隔離膜の形成の開始や伸張反応に関与するというモデルを提唱しました。
ここ1年ほどの間にAtg2に関する論文がいくつか報告されました。今回私たちが報告したC末端領域にある両親媒性へリックスは水島先生のグループから報告された哺乳類Atg2の隔離膜や脂肪滴への局在に必要な両親媒性へリックスに相当すると考えています。また、Atg2のリポソーム繋留活性は、最近、ヒトのAtg2Aでも同様の活性を示すことが大友先生のグループから報告されています。酵母、哺乳類どちらにおいても、Atg2の性質、機能が少しずつ明らかになってきましたが、隔離膜の伸張反応の理解にはまだ至っていません。Atg2が二つの膜構造体を繋留した後に何が起きるのか明らかにすることで隔離膜伸張メカニズムの解明に近づくと考えています。