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PubMedID 30451685 Journal Elife, 2018 Nov 19; [Epub ahead of print]
Title Lipidation-independent vacuolar functions of Atg8 rely on its noncanonical interaction with a vacuole membrane protein.
Author Liu XM, Yamasaki A, ..., Noda NN, Du LL
公益財団法人 微生物化学研究会   構造生物学研究部    山崎章徳     2018/11/21

新奇Atg8結合様式Helical AIMと非PE化Atg8による液胞膜制御
最近発表致しました私たちの論文についてご報告させていただきます。この研究は中国北京生命科学研究所 Dr. Li-Lin Duのグループと共同で行ったものです。

Atg8は隔離膜のPEに共有結合し、隔離膜の伸長や選択的オートファジー受容体との結合を行う重要な因子です。一方、PE化しないAtg8が液胞膜の調節に関与することも報告されてきましたが、詳細についてはあまりよくわかっていないままでした。またAtg8は構造内に持つ2つのポケットを介して、AIM/LIRと呼ばれ1残基目に芳香族アミノ酸、4残基目に疎水性アミノ酸を有する4残基からなるW-X-X-L様のモチーフを持つ蛋白質と結合することが広く知られています。

今回私たちは、分裂酵母Atg8を用いた結合蛋白質のスクリーニングから、液胞膜蛋白質SpHfl1を同定致しました。SpHfl1が発現した分裂酵母においてAtg8は液胞膜への局在が観察されますが、SpHfl1を欠損した株ではこの局在は失われます。実際に両者が結合しているかどうか調べると、SpHfl1の細胞質側に露出したC末端領域でAtg8との結合が観察されましたが、一次配列から既知のAIMを見出すことができませんでした。
そこで結晶構造解析から構造を調べると、Atg8における2つのポケットはそれぞれSpHfl1のPheとTyrが収まっていたもののその間が9残基であり、Tyrを含む領域がα-ヘリックスを形成している極めてユニークな結合様式であることがわかりました。Hfl1は出芽酵母からヒトまで広く保存されています。出芽酵母のScHfl1も、Atg8が結合するにも関わらず既知のAIMが存在しないことから結晶構造解析を行うと、TrpとIleでAtg8のポケットと結合すること、両残基の間は3残基であること、Ileを含む領域でヘリックス様構造をとることがわかりました。私たちはこれら特殊な結合様式がいずれもヘリックスを含んでいることからHelical AIMと命名致しました。
Atg8とHfl1との相互作用の生理的な意義を調べるために、細胞にDTT処理や亜鉛やコバルトなど金属イオンを高濃度で含む培地で培養してストレスを与えると、野生型酵母では問題ないものの、相互作用の失われた株では生育が阻害されました。さらに、出芽酵母のDiauxic shift時には、液胞上に脂肪滴によるマイクロドメインが形成されることが明らかとなっていますが、この形成もAtg8とScHfl1の間の相互作用に依存していることが明らかとなりました。これらストレス適応やマイクロドメイン形成は、atg7やatg4欠損時にも起こることからPE化に依存しないAtg8の機能であることが示唆されました。

本研究から、オートファジー以外におけるAtg8の機能の一端と、ヘリックスによって配列柔軟性が生まれたHelical AIMを同定することができました。今のところ、一次配列から新規Helical AIMを予測することは難しいですが、新規Atg8/LC3結合蛋白質を探索する際には、4残基のCanonical AIM/LIRの有無を確認するだけではなく、Helical AIMのような特殊な結合様式もあり得ることを頭の片隅に留めておいていただければと思います。
また最近Helical LIRというものが報告されましたが (Keown et al., JBC 2018)、この論文内のHelical LIRは配列全体がコイルドコイルであり、かつとても弱い相互作用であるため、モチーフと呼ぶべきかは今後の検証が必要かと思います。
   
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局