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PubMedID 30783089 Journal Nat Commun, 2019 Feb 19;10(1);847,
Title Suppression of autophagic activity by Rubicon is a signature of aging.
Author Nakamura S, Oba M, ..., Antebi A, Yoshimori T
大阪大学 大学院生命機能研究科/高等共創研究院  吉森研究室    中村修平     2019/03/19

Rubicon増加は老化のサインである
最近我々のグループから発表した論文を紹介させていただきます。近年のモデル生物を用いた研究で動物の寿命や老化が遺伝子や環境要因によって「制御」されていることがわかり、進化的に保存されたいくつかの寿命制御経路(インシュリン/IGF-Iシグナル、カロリー制限など)が明らかになってきています。これらはそれぞれ独立した経路ですが、興味深いことにその下流ではオートファジーの亢進が「共通」してみられ、またこれら経路による寿命延長にオートファジーの活性が必須であることから、オートファジーは多くの寿命制御経路のconvergent mechanismとして注目されています。一方でオートファジーの活性は加齢により低下することが知られていましたがそのメカニズムはよくわかっていませんでした。我々は以前、当研究室で同定したオートファジーの負の制御因子Rubiconが高脂肪食により増加し、脂肪肝の発症の原因になることを突き止めていました(Tanaka et al., Hepatology, 2016)。脂肪肝の有病率も加齢で増加しますので、今回Rubiconと老化の関係について調べてみました。すると興味深いことに線虫、ショウジョウバエ、マウスの腎臓や肝臓で加齢とともにRubiconが増加することを見出しました。この観察結果から、オートファジーの負の制御因子であるRubiconの増加が、加齢に伴うオートファジーの低下の要因の一つではないかと考えました。この仮説と一致し、RubiconをRNAiにより抑制すると線虫やショウジョウバエのメスでオートファジーの活性化がみられ、寿命の延長や運動機能低下を含む加齢性の表現系の改善がみられました。また、Rubicon ノックアウトマウスでもオートファジーが活性化し、加齢により増加する腎臓の繊維化が抑えられ、パーキンソン病の原因であるαシヌクレインの凝集蓄積が低下することがわかりました。これらのことからRubiconの加齢による増加はオートファジー低下と老化のサインになっていると考えられます。本研究は東京都医学総合研究所の鈴木マリさん、大場柾樹さんをはじめ多くの共同研究者のサポートによってなんとか形にすることができました。今後はRubiconの加齢による増加のメカニズム、Rubiconの各組織ごとの老化や寿命制御における機能解析を通じて、老化・寿命制御におけるオートファジーの役割をさらに明らかにしていきたいと思っています。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局