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PubMedID 30787039 Journal J Cell Biol, 2019 Feb 20; [Epub ahead of print]
Title COPII vesicles contribute to autophagosomal membranes.
Author Shima T, Kirisako H, Nakatogawa H
東京工業大学・生命理工学院  中戸川研究室    中戸川 仁     2019/04/26

COPII小胞はオートファゴソーム膜の一部になる
J. Cell Biol.誌に掲載されました私たちの最近の成果を紹介させていただきます。

  オートファゴソームの膜の供給源の解明は積年の重要課題の1つであり、様々なオルガネラが候補として議論が重ねられてきましたが、未だ決定打が打たれていないように思います。最近では小胞体が非常に有力な候補となっており、出芽酵母では特にCOPII小胞の形成がオートファゴソームの形成と密接に関わることが様々な結果から示唆されてきました。しかしながら、やはりCOPII小胞が実際にオートファゴソーム膜形成の材料となるかどうかについては直接的な証拠が欠けていました。あるオルガネラの脂質あるいは膜貫通型膜タンパク質がオートファゴソーム膜に移行することを示すことは、そのオルガネラが膜の供給源となっていることを示す端的な証拠となりえます。しかしながら、これまで、COPII小胞の積荷タンパク質を蛍光タンパク質で標識しても、オートファゴソーム膜上にそのシグナルが観察されたことはありませんでした。
  今回、私たちは、理研の黒川先生、中野先生らが開発したCOPII小胞を積荷膜タンパク質であるAxl2とGFPとの融合タンパク質で高度に標識するシステムを利用させていただき、Axl2-GFPが小胞体でCOPII小胞に積み込まれた後、隔離膜およびオートファゴソームの膜上に移行することを免疫電子顕微鏡解析によって明確に示すことに成功しました。これにより、COPII小胞がオートファゴソーム膜の一部となることを示すことができたと考えていますが、(i) COPII小胞は主要な膜供給源か? (ii) COPII小胞は膜伸張のための材料なのか、あるいは膜伸張に必要な特定の分子を供給しているのか? (iii) 本来ゴルジ体に向かうCOPII小胞がどのようにしてPAS/隔離膜にターゲティングされるのか(繋留と融合のメカニズム)? (iv) Atg2-Atg18複合体によるmembrane tetheringとlipid transferとの関係はどのようになっているのか? (v) 哺乳類でもCOPII小胞はオートファゴソーム形成に使われているのか(VSV-G温度感受性変異体とか使えそうな気がしますが)、など、多くの課題が残っています。

   
   本文引用



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